もしジェームズ・ボンドがもう少し現実的な予算でクルマを選ぶとしたら、アストンマーティンではなくジャガーXKを選んだかもしれない。 そんな冗談が成立するほど、2007年型ジャガーXKは魅力的なクルマだった。 アストンマーティンほどのブランドイメージはない。しかし、スタイリングは美しく、インテリアは豪華で、長距離を快適に走れるグランドツアラーとしての能力も高い。 しかも価格は75,500ドルから。 当時162,350ドルだったアストンマーティンDB9と比べれば、ほぼ半額である。 もちろん、単純に「安いアストンマーティン」と呼ぶのはXKに対して失礼だろう。 このクルマには、ジャガーならではの優雅さとスポーティさがある。 アストンマーティンを思わせるスタイリング 2007年型XKを初めて見たとき、多くの人がアストンマーティンを連想するのは当然だろう。 その理由は単なる偶然ではない。 XKのデザインを手掛けたのは、当時ジャガーのデザイン責任者だったイアン・カラム。 彼は以前アストンマーティンでもデザイン部門を率いており、ヴァンキッシュやDB7のスタイリングを手掛け、DB9のデザインにも影響を与えた人物だ。 そのため、新型XKにはアストンマーティンを思わせる流麗なラインが随所に見られる。 スタート価格は75,500ドル。 それだけの価格で、アストンマーティンに匹敵するセクシーさと上質感を手に入れられるのだから、XKは非常に魅力的な存在だった。 ただし、フロントマスクについては少々意見が分かれるかもしれない。 … 2007年型ジャガーXK試乗記――アストンマーティンの半額で手に入れる英国流グランドツアラーRead more
First Test
2026年型テスラ・モデル3 Standard試乗記――約4万ドルで手に入る、これも紛れもないテスラ
テスラ・モデル3は、電気自動車を特別な存在から「普通のクルマ」へと変えた一台だ。 そして2026年、テスラはそのモデル3をさらにシンプルにした。 新たに登場したエントリーグレードが「Model 3 Standard」である。 ただし、テスラはこの名称を導入後まもなく変更し、現在は単に「Model 3」と呼ばれている。ここでは分かりやすくStandardと呼ぶことにしよう。 価格はベースで38,630ドル。今回のテスト車でも39,630ドルだった。 上位のPremiumより約5,500ドル安い。 もちろん、価格を下げるために多くの装備が削られている。しかし興味深いのは、それでもモデル3の本質的な魅力はほとんど失われていないことだ。 むしろ「最も安いテスラ」でありながら、十分に速く、航続距離も長く、走りも意外なほど良い。 一方で、テスラらしい奇妙な操作系や割り切ったインテリアもそのまま残されている。 安くなった代わりに、何を失ったのか 外観だけを見れば、Standardと上位グレードを見分けるのは簡単ではない。 最も分かりやすい違いは、スチールホイールを覆うタービン風デザインの樹脂製ホイールキャップだろう。 サイドミラーからは電動格納機能と自動防眩機能が省かれ、ボディカラーもブラック、ホワイト、グレーの3色に限定される。 … 2026年型テスラ・モデル3 Standard試乗記――約4万ドルで手に入る、これも紛れもないテスラRead more
2026年型日産セントラSL試乗記――遅くても魅力的、実用セダンとしての完成度は高い
日産セントラは、決して速いクルマではない。むしろ2026年型の最上級グレード「SL」をテストすると、その動力性能には少し物足りなさを感じる。 しかし、それだけでこのクルマを評価してしまうのは早計だ。 セントラの本当の魅力は、手頃な価格、上質なインテリア、意外なほど優れたハンドリング、そして日常の足として必要なものをきちんと揃えていることにある。 今回テストした2026年型セントラSLの車両価格は29,235ドル。オプションなどを含めたテスト車でも30,990ドルに収まっていた。3万ドル前後のセダンとして考えれば、決して「安いから我慢して乗るクルマ」ではない。 パワー不足は明らかな弱点 2026年型セントラは、基本的に従来型と同じプラットフォームを使用している。そしてパワートレインも大きく変わっていない。 搭載されるのは2.0L自然吸気直列4気筒エンジンで、最高出力149hp、最大トルク146lb-ftを発生。トランスミッションはCVTで、駆動方式は前輪駆動だ。 現在のコンパクトカー市場を考えると、この数字はかなり控えめだ。 例えば今回テストしたセントラSLは0-60mph(約97km/h)加速に9.0秒を要した。同じく2026年型のKia K4は1.6Lターボで190hp、195lb-ftを発生し、0-60mphを7.0秒で駆け抜ける。 さらに、以前テストしたセントラSRは8.3秒だった。今回のSLはそれよりも遅い。 1/4マイルでも結果は16.9秒、終端速度83.8mph。セントラSRの16.5秒や、Kia K4の15.4秒と比べると、加速性能では明らかに不利だ。 そして、2026年型セントラにはハイブリッド仕様も用意されていない。電気モーターのアシストによって発進時の力強さを補うこともできない。 この点は、トヨタやホンダなどがハイブリッドを展開する現在のコンパクトセダン市場では、大きな弱点になっている。 ブレーキ性能にも課題 … 2026年型日産セントラSL試乗記――遅くても魅力的、実用セダンとしての完成度は高いRead more
2026年型フォード・マスタング・ダークホースSC試乗記――GTDの95%を、約半額で手に入れる
フォード・マスタングの新たな頂点として登場した「ダークホースSC」は、一体どんなクルマなのか。 その答えを簡単に言えば、マスタングGTDのパフォーマンスを、より現実的な価格で楽しめるモデルだ。 もちろん、GTDとまったく同じではない。専用サスペンションやアクティブエアロ、ワイドボディなど、GTDが持つ特別な装備は採用されていない。 しかし、実際にテストしてみると、加速、制動、コーナリング性能の多くでGTDに驚くほど近い数字を記録した。 しかも、限定生産モデルではない。 2026年型マスタング・ダークホースSCは、かつてのシェルビーGT500が担っていたポジションを引き継ぎながら、GTDとの間を埋める存在として登場した。 では、この「GTDの廉価版」とも呼べるスーパーマスタングは、実際にどれほどの実力を持っているのだろうか。 ダークホースSCは「GT500の後継」であり「GTDの弟分」 ダークホースSCには、いくつかの見方がある。 最も分かりやすいのは、シェルビーGT500の後継モデルというものだ。 もうひとつは、通常のダークホースに大幅なパワートレイン変更を施したモデルという見方。 そしてもうひとつが、マスタングGTDから専用サスペンションやアクティブエアロ、ワイドボディを取り除いたモデルという考え方だ。 どれも間違いではない。 ボンネットの下に搭載されるのは、マスタングGTDや先代シェルビーGT500にも使われてきた5.2リッター・スーパーチャージドV型8気筒「Predator」。 最高出力は795hp(約806PS)、最大トルクは660lb-ft(約895Nm)に達する。 これはGT500より35hp多く、GTDより20hp少ない。 … 2026年型フォード・マスタング・ダークホースSC試乗記――GTDの95%を、約半額で手に入れるRead more
2026年型ポルシェ911ターボSカブリオレ試乗記――701馬力、30万ドル超の「合理的な」スーパーカー
30万ドルを超える価格。 701馬力。 0-60mph加速はわずか2.3秒。 そして、ルーフを開けても閉じても、ほとんど変わらない走行性能。 2026年型ポルシェ911ターボSカブリオレは、数字だけを見ればスーパーカーそのものだ。 しかし、このクルマには少し変わったところがある。 その驚異的な性能が、公道ではほとんど使い切れないのだ。 では、30万ドルを超える金額を払ってまで、この911ターボSカブリオレを選ぶ理由は何なのか。 MotorTrendが今回向き合ったのは、まさにその問題だった。 30万ドルの911を買う理由 まず価格を確認しておこう。 2026年型911ターボSカブリオレのベース価格は286,650ドル。 今回のテスト車はオプションを加え、304,330ドルに達した。 日本円に単純換算すればかなりの金額になるが、それ以上に重要なのは、この価格帯になると911ターボSカブリオレが一般的な高性能スポーツカーではなく、完全にスーパーカーの領域へ入ってくることだ。 しかし、ポルシェはフェラーリやランボルギーニとは少し違う。 フェラーリなら「スーパーカーに乗っている」ということ自体がひとつのメッセージになる。 … 2026年型ポルシェ911ターボSカブリオレ試乗記――701馬力、30万ドル超の「合理的な」スーパーカーRead more
2027年型メルセデス・ベンツS580 4MATIC試乗記――これぞSクラス、進化を極めたフラッグシップ
自動車に詳しくない人でも、その姿を見れば「Sクラスだ」と分かる。 それがメルセデス・ベンツSクラスというクルマの特別なところだ。 長年にわたり、Sクラスはメルセデス・ベンツの技術力、快適性、そしてステータスを象徴する存在であり続けてきた。新しい技術が最初にSクラスへ投入され、それが数年後には下位モデルへと広がっていく。Sクラスは単なる高級セダンではなく、自動車業界の未来を示すショーケースでもあった。 しかし、アイコンになったクルマには難しい宿命がある。 変わり続けなければならない一方で、変わりすぎてもいけない。 2027年型S580 4MATICは、まさにその難題に挑んだモデルだ。 外観だけを見れば、これまでのSクラスから大きく変わったようには見えないかもしれない。 だが、その中身には大幅な進化が詰め込まれている。 そしてMotorTrendが実際に試した結果、この新型S580は「史上最高のSクラス」と呼んでもいいところまで来ている。 ベルベットの手袋に包まれた、530馬力の拳 新型S580の最大のニュースは、ボンネットの下にある。 搭載されるのは、新開発の4.0LツインターボV8「M177 Evo」。 しかも従来のV8とは異なり、フラットプレーンクランクシャフトを採用している。 フラットプレーンV8は、クロスプレーンV8と比べて燃焼間隔が対称になるため排気ガスの流速を高めやすく、ターボチャージャーを素早く立ち上げられるというメリットがある。 … 2027年型メルセデス・ベンツS580 4MATIC試乗記――これぞSクラス、進化を極めたフラッグシップRead more
2027年型メルセデス・ベンツCLA350 4MATIC試乗記――これが新世代メルセデスの未来なのか?
メルセデス・ベンツのエントリーモデルだったCLAが、大きく生まれ変わった。 2027年型Mercedes-Benz CLA350 4MATICは、これまでのCLAとはまったく違う。新開発のMMA(Mercedes-Benz Modular Architecture)を採用したEVとして生まれ変わり、800V電気システム、新しいMB.OSインフォテインメント、そして将来的にはハンズオフでのポイント・トゥ・ポイント運転を可能にする先進運転支援システムまで導入する。 つまり、このCLAは単なる新型車ではない。 これからのメルセデス・ベンツがどの方向へ進んでいくのかを示す、技術的なパイオニアなのだ。 ただし、すべてが完璧というわけではない。 圧倒的な航続距離と急速充電性能を持つ一方で、荒れた路面ではサスペンションが落ち着きを失い、アクセルペダルは過敏。さらに、車両の起動や空調など、一見すると理解しにくい操作ロジックも残されている。 CLAのイメージを一度リセットしたほうがいい 初代CLAが登場したのは2013年。 当時のCLAは、メルセデス・ベンツのファミリーの中でも少し異質な存在だった。コンパクトなボディにプラスチッキーなインテリア、硬い乗り心地、4気筒エンジン。 三つ星のエンブレムを掲げるには、少し物足りないという評価も少なくなかった。 2019年に登場した2代目では多くの部分が改善されたものの、「小さく、安価なメルセデス」というイメージは簡単には消えなかった。 しかし、2027年型CLA350 … 2027年型メルセデス・ベンツCLA350 4MATIC試乗記――これが新世代メルセデスの未来なのか?Read more
2007年型Saleen S7 Twin Turbo試乗記――750馬力、妥協なきアメリカン・スーパーカー
750馬力。車重はわずか約1,247kg。そして、快適性や電子制御をほとんど捨て去ったレーシングカーのようなキャラクター。 2007年型Saleen S7 Twin Turboは、現代のスーパーカーという言葉から想像する「速くて快適なクルマ」とはまったく違う存在だ。 アメリカ・カリフォルニア州アーバインは、フェラーリの故郷であるモデナではない。スティーブ・サリーンもエンツォ・フェラーリではない。それでも、マスタングのレーシングドライバーから自動車メーカーへと転身したサリーンは、220mph(約354km/h)を超える最高速を狙う、完全にアメリカ生まれのスーパーカーを作り上げた。 その心臓部に搭載されるのは、7.0LのOHV V8。しかもエンジンは車体中央に搭載される。 S7そのものがすでに驚異的な存在だったが、Twin Turboはそこからさらに一段上を目指した。ターゲットはフェラーリではなく、当時スーパーカーの頂点に君臨していたブガッティ・ヴェイロンだ。 750馬力をわずか1.2トンの車体に S7 Twin Turboの公称出力は750hp。最大トルクは700lb-ft(約949Nm)に達する。 自然吸気仕様として2003年に登場したS7と比較すると、最高出力は36%、最大トルクは33%も増加している。 しかも車重は約2,750lb(約1,247kg)。 … 2007年型Saleen S7 Twin Turbo試乗記――750馬力、妥協なきアメリカン・スーパーカーRead more
2027年型日産Z NISMO MT試乗記――待望の6速MT、その走りは本当に進化したのか?
日産Z NISMOに、ついに6速マニュアルトランスミッションが戻ってきた。 現行Z NISMOが登場したとき、熱心なファンを最も落胆させたのが、マニュアル仕様の設定がなかったことだった。420hpを発生する3.0リッターV型6気筒ツインターボを搭載しながら、トランスミッションは9速ATのみ。 2027年型では、その問題に日産が答えを出した。 新たに6速MTを設定。高性能クラッチやショートストローク化されたシフトレバー、カーボン製プロペラシャフト、SynchroRev Matchなどを組み合わせ、NISMOらしいドライバーズカーへと仕立てている。 ただし、実際に乗ってみると、話はそれほど単純ではない。 サーキットでは非常に優秀だ。 シャシーは安定しており、ブレーキも強力。コーナーでは狙ったラインを正確にトレースできる。 その一方で、車重の重さ、硬い乗り心地、騒音、そして扱いにくいマニュアルトランスミッションなど、現行Zが抱えてきた古さもはっきりと感じられる。 つまり、このZ NISMOは「最高のZ」ではある。 しかし同時に、非常によく仕上げられた古いスポーツカーでもある。 ようやくNISMOに6速MTが登場 2027年型Z … 2027年型日産Z NISMO MT試乗記――待望の6速MT、その走りは本当に進化したのか?Read more
2008年型メルセデス・ベンツCLK63 AMGブラックシリーズ試乗記――F1セーフティカーの魂を持つ究極のAMG
2008年型メルセデス・ベンツCLK63 AMGブラックシリーズは、単なる高性能クーペではない。 それは、F1セーフティカーの雰囲気と技術を公道へ持ち込んだ、当時のAMGが生み出した最も過激なロードカーのひとつだ。 ベースとなったのはCLK63 AMG。 そこから車重を削り、エンジンを強化し、トレッドを拡大。サスペンションやブレーキ、タイヤ、冷却系まで徹底的に手を入れた。 結果として完成したのは、快適なラグジュアリークーペというよりも、ナンバープレートを付けたレーシングマシンに近い存在だった。 MotorTrendが実際にテストしたCLK63 AMGブラックシリーズは、0-60mph(約96km/h)を4.2秒、1/4マイル(約402m)を12.6秒で駆け抜けた。 しかも、その魅力は直線加速だけではない。 F1セーフティカーを公道へ CLK63 AMGブラックシリーズを語るうえで欠かせないのが、F1セーフティカーとの関係だ。 このモデルは、F1で使用されるメルセデスのセーフティカーを連想させるキャラクターを持っている。 もちろん、実際のF1マシンと同じ性能を持つわけではない。 しかし、AMGが目指した方向性は明確だった。 … 2008年型メルセデス・ベンツCLK63 AMGブラックシリーズ試乗記――F1セーフティカーの魂を持つ究極のAMGRead more