日産Z NISMOに、ついに6速マニュアルトランスミッションが戻ってきた。
現行Z NISMOが登場したとき、熱心なファンを最も落胆させたのが、マニュアル仕様の設定がなかったことだった。420hpを発生する3.0リッターV型6気筒ツインターボを搭載しながら、トランスミッションは9速ATのみ。
2027年型では、その問題に日産が答えを出した。
新たに6速MTを設定。高性能クラッチやショートストローク化されたシフトレバー、カーボン製プロペラシャフト、SynchroRev Matchなどを組み合わせ、NISMOらしいドライバーズカーへと仕立てている。
ただし、実際に乗ってみると、話はそれほど単純ではない。
サーキットでは非常に優秀だ。
シャシーは安定しており、ブレーキも強力。コーナーでは狙ったラインを正確にトレースできる。
その一方で、車重の重さ、硬い乗り心地、騒音、そして扱いにくいマニュアルトランスミッションなど、現行Zが抱えてきた古さもはっきりと感じられる。
つまり、このZ NISMOは「最高のZ」ではある。
しかし同時に、非常によく仕上げられた古いスポーツカーでもある。
ようやくNISMOに6速MTが登場
2027年型Z NISMO最大のニュースは、何といっても6速MTだ。
通常のZにも設定されている6速MTをベースに、NISMO用として改良。
ショートストローク化されたシフトレバーに加え、高性能Exedyクラッチやカーボンファイバー製プロペラシャフトを組み合わせている。
さらにSynchroRev Matchも標準装備。
シフトダウン時にエンジン回転数を自動的に合わせてくれるため、スポーツ走行では非常に便利な機能だ。
NISMO専用のパワートレインは、通常のZより20hp、34lb-ftパワーアップ。
最高出力は420hp、最大トルクは384lb-ftに達する。
エンジンは3.0リッターV型6気筒ツインターボ。
駆動方式はもちろん後輪駆動だ。
スペックだけを見れば、まさに理想的なスポーツカーに思える。
しかし、実際にシフトレバーを操作すると、少し印象が変わってくる。
シフト操作は意外と手強い
NISMO専用シフトレバーは標準Zより短くなっている。
ただ、ストロークそのものが劇的に短くなったわけではない。
それ以上に気になるのが、ギアをゲート間で動かす際に必要な力だ。
操作感はかなり硬く、ひとつひとつのギアを明確に選ぶ必要がある。
ゆっくり操作すれば機械的でしっかりした感触があり、スポーツカーらしい。
しかし、素早くシフトしようとすると、動きが渋く感じられたり、正確さを失ったりすることがある。
クラッチも簡単ではない。
つながるポイントが分かりにくく、発進時には少し神経を使う。
通常のMT仕様Zでは、シフトストロークは長めながらもトランスミッションは比較的扱いやすかった。
それに対してNISMOのMTは、より本格的になった反面、ドライバーへ要求する操作量も増えている。
ローンチコントロールにもクセがある
この問題は発進時にさらに顕著になる。
ローンチコントロールを使用すると、エンジン回転数は3,000rpmに保持される。
しかし、クラッチを一気につなげばいいわけではない。
クラッチペダルを慎重に戻しながら、適切なポイントでトルクを路面へ伝える必要がある。
その加減は意外に難しい。
操作を誤るとエンジン回転が落ち込み、加速が鈍くなることもある。
ローンチコントロールを使わなければ簡単になるかというと、そうでもない。
エンジン回転数には依然として制限があるため、発進にはある程度のテクニックが必要になる。
1速から2速へのシフトも、思った以上に慎重なクラッチ操作が必要だ。
つまり、6速MTを追加したことでドライバーとの一体感は確実に増した。
しかし、それは必ずしも「簡単に楽しめる」という意味ではない。
420hpのVR30DDTTは力強い
一方、エンジンには不満がない。
3.0リッターV6ツインターボ「VR30」は、中速域から非常に力強いトルクを発生する。
最大トルク384lb-ftは2,000rpmから発生し、追い越し加速でも十分な余裕を見せる。
ただし、高回転まで気持ちよく回り続けるタイプではない。
4,000rpm付近を超えるとエンジンは明らかに活発になり、6,800rpmのレッドラインまで一気に引っ張っていく。
低回転域では力強さ、高回転域では勢いを見せるタイプだ。
エンジンサウンドも特徴的。
V8や直列6気筒のような滑らかさとは違い、少し粗く、トラックのような機械的な音が聞こえる。
それがZ NISMOの個性にもなっている。
0-60mphは4.7秒
MotorTrendの実測では、0-60mph(約96km/h)加速は4.7秒。
1/4マイル(約402m)は**13.2秒、終速108.0mph(約174km/h)**だった。
この数字だけを見ると十分に速い。
しかも、今回のMT仕様はMotorTrendがこれまでテストしたマニュアルZの中で最速。
過去の370Zの最速モデルと同等のパフォーマンスを見せ、350Zのテスト車よりも明確に速い。
ただし、9速ATのZ NISMOにはかなわない。
AT仕様は0-60mphで約0.5秒速く、1/4マイルでも0.7秒短いタイムを記録している。
また、マニュアル仕様のフォード・マスタング・ダークホースにも同程度の差をつけられる。
つまり、最速タイムだけを求めるなら、MTを選ぶ理由はない。
この6速MTの価値は、タイムではなく自分でクルマを操ることそのものにある。
サーキットでは本領を発揮
Z NISMOが最も輝くのは、やはりサーキットだ。
限界付近まで追い込んでも、クルマは非常に安定している。
ステアリングは重めだが正確。
コーナー進入では狙ったラインへ素直に入っていき、素早い切り返しでもシャシーは落ち着いている。
ドライバーが積極的に操作しても、クルマが急激に挙動を変えることはない。
これは標準Zから大きく進化した部分だ。
通常のZ Performanceもバランスは良かったが、NISMOはグリップが高く、ボディの動きも抑えられている。
さらに、強化されたブレーキ、追加されたシャシーブレース、専用タイヤ、よりアグレッシブなサスペンションセッティングが、サーキットでの安心感を大幅に高めている。
2027年型ではダンパーのストロークも改良され、動きがより滑らかになった。
ただし、車重そのものは依然として感じられる。
軽快というより「重厚」
Z NISMOをコーナーへ持ち込んで最初に感じるのは、軽快さではない。
むしろ重厚さだ。
クルマはしっかり路面に張り付き、安定している。
しかし、軽量スポーツカーのようにヒラヒラと向きを変える感覚ではない。
限界まで追い込むと、適度なアンダーステアが顔を出す。
リアが積極的に流れてクルマが旋回するタイプではなく、どちらかといえばフロントのグリップを使いながら安定して曲がっていく。
この性格は、サーキット初心者にとってはむしろ扱いやすい。
挙動が予測しやすく、急激なオーバーステアを起こしにくいからだ。
一方で、ドライバーが積極的にクルマを動かして楽しみたい場合には、少し物足りなく感じる可能性もある。
ブレーキはNISMO最大の長所
Z NISMOの強みのひとつがブレーキだ。
フロントには2ピース構造のAkebono製ディスクブレーキを採用。
鍛造アルミニウム製ハットと高性能パッド、NISMO専用キャリパーを組み合わせている。
ペダルを踏んだ瞬間の初期制動力は強く、踏力に対する反応も分かりやすい。
さらに、サーキットでハードブレーキングを繰り返しても、制動力の低下がほとんど感じられない。
MotorTrendのテストでも、60-0mph停止距離は107フィート(約32.6m)。
横方向加速度は1.03G、8の字テストは24.2秒、平均0.81Gを記録した。
標準Zのブレーキペダルがやや柔らかく、曖昧に感じられるのに対して、NISMOは明確にスポーツカーらしいブレーキフィールを持っている。
マスタング・ダークホースには一歩及ばない
MotorTrendはZ NISMOをマニュアルのマスタング・ダークホースとも比較している。
ダークホースはZ NISMOより速く、より高いグリップを発揮した。
もちろん、テスト車にはサーキット走行向けのPirelli P Zero Trofeo RSが装着されていたため、タイヤの違いも無視できない。
対するZ NISMOのDunlop SP Sport Maxx GT 600は、高性能ストリートタイヤとして優秀だが、レーシングサーキットで長時間高温にさらされることを前提としたタイヤではない。
それでも、Z NISMOは十分に高いコーナリング性能を持っている。
そして、サーキットで重要なのは絶対的な速さだけではない。
Z NISMOは非常に予測しやすく、ドライバーが安心して限界へ近づける。
乗り心地はかなり硬い
問題は、サーキットを離れたときだ。
Z NISMOのサスペンションは、当然ながら硬い。
きれいに舗装された道路では問題ない。
しかし、荒れた路面へ入ると、かなりの振動がキャビンへ伝わってくる。
高速道路ではロードノイズも大きく、エンジンや排気音よりもタイヤの音が目立つことがある。
そのため、エンジン回転数を音で判断してシフトすることさえ難しくなる場合がある。
路面がきれいなら意外なほど普通に乗れる。
しかし、荒れた道路では乗員が疲れやすく、場合によっては頭痛を感じるほどだという評価もあった。
サーキット性能を優先した結果としては理解できるが、約7万ドルのスポーツカーとして見ると無視できない弱点だ。
室内にも古さが見える
Zのインテリアは機能的だ。
物理スイッチも残されており、操作系は分かりやすい。
3連メーターやプログラム可能なシフトライトも、スポーツカーらしい演出として楽しめる。
しかし、室内をじっくり見ると、このクルマが決して新しいプラットフォームではないことが分かる。
何度もアップデートを受けてきた古い車体に、最新の装備を追加したような印象が残る。
それが「古き良きチューナーカー」らしい魅力につながっている面もある。
しかし、乗り心地、ロードノイズ、ドライビングポジションなどと組み合わさると、その古さは無視しにくくなる。
特にステアリングホイールが大きく、シートポジションによっては前方の路面やメーター類の視界を邪魔することがある。
それでもスープラより実用的
Z NISMOには意外な実用性もある。
2シーターながらハッチバック形状の荷室を持ち、トヨタ・スープラより荷物を積みやすい。
キャビンも比較的開放的で、外側の視界も良い。
Recaroシートは身体をしっかり支えながら、座り心地も悪くない。
ただし、シートの太いサイドサポートに対して、太ももを支える部分はやや物足りない。
さらに手動調整式のシートは、7万ドルを超えるクルマとしては少し時代遅れに感じられる。
快適なドライビングポジションを見つけるのにも、人によっては苦労するだろう。
2027年型日産Z NISMOの価格とスペック
2027年型Z NISMOのベース価格は68,555ドル。
今回のテスト車は70,080ドルだった。
この価格で、6速MT、420hpエンジン、NISMO専用サスペンションとステアリング、大型ブレーキ、Recaroシート、専用エアロ、鍛造Raysホイールなどが装備される。
2027 Nissan Z NISMO
- ベース価格: 68,555ドル
- テスト車価格: 70,080ドル
- 駆動方式: FR
- 乗車定員: 2名
- ボディ: 2ドア・ハッチバック
- エンジン: 3.0L V型6気筒ツインターボ
- 最高出力: 420hp/6,400rpm
- 最大トルク: 384lb-ft/2,000rpm
- トランスミッション: 6速MT
- 車両重量: 3,576lb(約1,622kg)
- 前後重量配分: 57:43
- ホイールベース: 100.4インチ(約2,550mm)
- 全長×全幅×全高: 173.2×73.6×51.8インチ
- タイヤ: Dunlop SP Sport Maxx GT 600
- フロント: 255/40R19 100Y XL
- リア: 285/35R19 103Y XL
- EPA燃費: 16/21/18mpg(市街地/高速/複合)
- EPA航続距離: 295マイル(約475km)
MotorTrend実測値
- 0-60mph: 4.7秒
- 1/4マイル: 13.2秒 @ 108.0mph
- 60-0mph: 107フィート(約32.6m)
- 横方向加速度: 1.03G
- 8の字: 24.2秒 @ 0.81G
総評――これこそ最初から作るべきだったZ NISMO
2027年型日産Z NISMO MTは、現行Zの中では間違いなく最も完成度の高いモデルだ。
420hpのV6ツインターボは力強く、ブレーキは強力。
シャシーは標準Zよりも明らかに安定しており、サーキットでは非常に安心して攻め込める。
そして何より、ファンが待ち続けた6速MTがようやく追加された。
しかし、そのマニュアルトランスミッションは決して万人向けではない。
クラッチは扱いが難しく、シフトレバーも硬い。
ローンチコントロールを使った発進にもコツが必要で、素早いシフト操作では渋さを感じることがある。
さらに車重の重さ、硬い乗り心地、大きなロードノイズ、古さを感じさせるインテリアも残っている。
価格も約7万ドル。
同じ価格帯にはマニュアルのマスタング・ダークホースが存在し、性能や完成度ではフォードに軍配が上がる。
それでもZ NISMOには独特の魅力がある。
軽快で洗練された最新スポーツカーというより、重厚で機械的、そして少し不器用な昔ながらのチューナーカーなのだ。
サーキットへ持ち込めば、そのキャラクターは一気に魅力へ変わる。
ステアリングは重く、ブレーキは強力。
シャシーは安定し、420hpのV6はコーナーの立ち上がりで強烈な加速を見せる。
だからこそ、6速MTを搭載したZ NISMOは「日産が最初から作るべきだったクルマ」と言える。
ただし、それは同時に、長年にわたって進化を続けてきた古いスポーツカーでもある。
最高のZ NISMOではある。だが、最新のスポーツカーとして最高かと言われれば、答えは少し違う。
Z NISMOの魅力は最新技術ではなく、古典的なスポーツカーらしい機械感と、ドライバーが自分で操作する楽しさにある。
それこそが、この6速MT仕様の最大の価値なのだ。