フォルクスワーゲン最大のSUV「アトラス」が2027年モデルで大きく生まれ変わった。エクステリアはよりモダンになり、インテリアも質感を大幅に高め、エンジンもパワーアップしている。
一方で、アトラスが2018年の登場以来大切にしてきた「家族をゆったり乗せ、荷物もしっかり積める3列SUV」という基本コンセプトは変わっていない。
では、フルモデルチェンジによってアトラスはどこまで進化したのか。実際に2027年型アトラス SEL Premium R-Lineをテストした。
より洗練された新しいデザイン
2027年型アトラスのフロントマスクは、力強く盛り上がったボンネットとマスクされたアッパーグリル、縦方向に配置されたLEDヘッドライトによって、従来型よりも存在感のあるデザインに仕上げられている。
ベースグレードを除くモデルでは、イルミネーション付きのVWエンブレムをライトバーが囲む。またリアにも車幅いっぱいに広がるライティングが採用され、夜間には独特の存在感を放つ。
2列シート仕様の「アトラス クロススポーツ」も同じフロントデザインを採用するが、両車のキャラクターは明確に異なる。
3列シートのアトラスは、より直立したルーフとリアウインドーを持ち、室内空間と積載性を重視。一方のクロススポーツはルーフラインがリアに向かって大きく傾斜しており、よりスポーティなスタイルを強調している。
ボディサイズも異なり、クロススポーツはアトラスより全長が5.4インチ短く、全高も2.1インチ低い。
インテリアは大幅にプレミアム化
今回のモデルチェンジで最も大きく変わったのがインテリアだ。
ダッシュボードには横方向に伸びるデザインのラインが設けられ、ディスプレイやエアコン吹き出し口、各種トリムを一体的に見せている。
ダッシュボードやセンターコンソール、ドアには本物のウッドやソフトタッチ素材を採用。従来型よりも明らかに上質な雰囲気になった。
アンビエントライトも標準装備され、最大30色から選択可能。上級グレードではドアにもイルミネーションパターンが組み込まれる。
今回テストしたSEL Premium R-Lineにはナッパレザーを採用。コントラストの効いたインテリアと相まって、最上級グレードらしい高級感を演出していた。
ただし、このレベルの質感が全グレードで味わえるわけではない。
実用面でも改良が加えられている。
シフトレバーをステアリングコラム側に移したことで、センターコンソールのスペースを拡大。またドアハンドルもアームレスト付近へ移動され、ドアパネル全体がすっきりとしたデザインになった。
ただし、このドアハンドルは持ち上げてから押すという少し独特な操作が必要。さらにピアノブラックの加飾は、せっかくの上質なインテリアに対してやや安っぽく見えることもある。
見た目は大きく進化したが、すべての部分が使いやすくなったわけではない。
パワーアップしたのに、加速はむしろ遅い
走りについては、2027年型アトラスも従来型と同じく「大きなSUVらしい」キャラクターを持っている。
サスペンションは柔らかめで、コーナーではボディがロールする。路面が荒れてくると乗り心地も落ち着きを失い、鋭い段差からの衝撃がキャビンへ伝わってくる。
高速道路や市街地のような比較的スムーズな路面では穏やかで快適だが、荒れた路面ではボディの動きが大きくなりやすい。
この点は従来型アトラスから完全には改善されていない。
そして意外なのが、加速性能だ。
2027年型アトラスには、フォルクスワーゲンの2.0リッター直列4気筒ターボを改良したエンジンが搭載され、最高出力は282hpに達する。
しかし実際のテストでは、0-60mph(約96km/h)加速に8.0秒を要した。
1/4マイル(約402m)は16.1秒、終速90.4mph(約145km/h)だった。
これは、269hpの2.0リッターターボを搭載していた2024年型SEL Premium R-Lineよりも遅い。
2024年型は0-60mphを7.5秒、1/4マイルを15.7秒で走り切っている。
なぜパワーアップした2027年型のほうが遅いのか。
大きな理由のひとつが車重だ。今回テストした2027年型は、2024年型より148ポンド(約67kg)重かった。
さらに新型エンジンは最高出力こそ13hp増えているものの、最大トルクは従来型より15lb-ft少ない258lb-ftとなっている。
つまり、スペック上の最高出力アップが、そのまま加速性能の向上にはつながらなかったわけだ。
もちろん、アトラスの本来の役割を考えれば、これは致命的な問題ではない。しかし「新型」「パワーアップ」という言葉から期待するほどの速さではない。
燃費は少し改善
一方、燃費性能については改善が見られる。
今回テストしたAWDモデルのEPA燃費は、市街地20mpg、高速道路27mpg、複合23mpg。
2026年型SE 4MOTIONの20/26/22mpgから、わずかながら向上している。
さらにFWDモデルでは改善幅がより大きく、2026年型の20/27/23mpgから、2027年型では22/29/25mpgとなった。
燃料価格が高い状況では、わずかな加速性能の違いよりも、こちらの改善を重視するユーザーも多いだろう。
ブレーキ性能については従来型とほぼ同じで、60mphからの停止距離は123フィート(約37.5m)。
一方、スキッドパッドではわずかに高いグリップを示し、8の字テストでも少し速いタイムを記録した。
ただし、ハンドリング性能が劇的に変わったわけではない。
新型アトラスは依然として、鋭いレスポンスよりも快適で穏やかな乗り味を優先している。
最大の魅力は、やはり広い室内
アトラスの最大の強みである室内空間は、2027年型でも健在だ。
1列目と2列目は十分に広く、大人が快適に過ごせるスペースが確保されている。
3列目も大人が利用できるだけの余裕がある。ただし、身長の高い乗員にとってはヘッドルームがやや厳しく感じられる可能性がある。
2列目シートは前後スライドとリクライニングが可能で、乗員に合わせてスペースを調整できるほか、3列目へのアクセスもしやすい。
レッグルームは1列目が41.7インチ、2列目が37.6インチ、3列目が34.1インチ。
1列目と2列目は従来型と同じだが、3列目は0.4インチ拡大された。
劇的な変化ではないものの、もともと広かったアトラスの長所をそのまま維持している。
荷室もファミリーSUVらしい広さ
荷室容量もほぼ従来型と同じだ。
3列目使用時で21.2立方フィート、3列目を倒して2列目後方まで使用すると55.9立方フィート。
両方のリアシートを倒せば95.4立方フィートの容量を確保できる。
3列目まで乗員を乗せながら荷物も積めるというアトラスの実用性は、新型になっても失われていない。
大人数での移動と荷物の運搬を両立させたいファミリーにとって、ここは依然として大きな魅力だ。
大型タッチスクリーンと、減った物理スイッチ
テクノロジー面も大きく進化した。
ドライバー前方には10.3インチのデジタルディスプレイを搭載。センターインフォテインメントディスプレイはベースのSEでも12.9インチとなり、上級グレードではさらに大型の15.0インチディスプレイが採用される。
ワイヤレスApple CarPlayとAndroid Auto、ワイヤレス充電器2基、USB-Cポート7個も標準装備される。
ディスプレイは明るく、表示内容のカスタマイズも可能。センターディスプレイはドライバー側へ角度が付けられている。
ただし、大型ディスプレイを採用したことが、そのまま操作性の向上につながっているわけではない。
従来型と同じく、一部の操作は直感的とは言い難い。
特に空調などの日常的な操作までタッチスクリーンへの依存度が高く、慣れるまで時間が必要になる。
家族で共有するSUVの場合、複数のドライバーが運転することを考えると、この点は少し気になるところだ。
一方、センターコンソールには物理ダイヤルが残されており、音量やドライブモードを操作できる。
このダイヤルは、室内の照明やオーディオ、メーターディスプレイの設定をまとめて変更する「Atmospheres」の操作にも使われる。
オーディオシステムは多くのグレードで9スピーカーを採用し、最上級のSEL Premium R-Lineでは14スピーカーのHarman Kardonシステムを搭載する。
2027年型アトラスの価格とスペック
今回テストした2027年型フォルクスワーゲン・アトラス SEL Premium R-Lineの価格は58,135ドル。
ラインアップはSE FWDが43,135ドルからスタートし、AWDを選択すると45,135ドルとなる。
2027 Volkswagen Atlas SEL Premium R-Line
- 車両価格: 58,135ドル
- 駆動方式: フロントエンジン/AWD
- 乗車定員: 7名
- エンジン: 2.0L 直列4気筒ターボ
- 最高出力: 282hp/6,000rpm
- 最大トルク: 258lb-ft/2,000rpm
- トランスミッション: 8速AT
- 車両重量: 4,785lb(約2,171kg)
- 前後重量配分: 55:45
- ホイールベース: 117.3インチ(約2,979mm)
- 全長×全幅×全高: 203.1×78.3×70.3インチ
- タイヤ: Hankook Dynapro HPX
- タイヤサイズ: 265/45R21 104H M+S
- EPA燃費: 20/27/23mpg(市街地/高速道路/複合)
- EPA航続距離: 428マイル(約689km・推定)
- 0-60mph: 8.0秒
- 1/4マイル: 16.1秒 @ 90.4mph
- 60-0mph制動距離: 123フィート(約37.5m)
- 横方向加速度: 0.82G
- 8の字テスト: 27.5秒 @ 0.63G
総評――大きく変わったが、アトラスらしさはそのまま
2027年型フォルクスワーゲン・アトラスは、2018年に登場したファミリーSUVをより現代的に、そしてより上質に仕立て直したモデルだ。
エクステリアは新鮮になり、インテリアは質感が大きく向上。大型ディスプレイや最新のテクノロジーも加わった。
それでいて、広々とした3列シートや使い勝手の良い荷室など、アトラスがこれまで評価されてきた部分はしっかりと残されている。
ただし、走りについては劇的な進化とはいえない。
柔らかいサスペンションは荒れた路面で落ち着きを失いやすく、タッチスクリーン中心の操作系も好みが分かれる。そして282hpへパワーアップしたにもかかわらず、今回のテストでは従来型より0-60mph加速が遅かった。
燃費性能の向上やハンドリング性能の小幅な改善はプラス材料だが、2027年型アトラスは「すべてを一新したSUV」というより、これまでの長所を丁寧に磨き上げた進化型と見るのが正しいだろう。
つまり、新型アトラスはキャラクターそのものを変えたわけではない。
広い室内、使いやすい3列シート、十分な荷室、そして家族を快適に運ぶこと。
その基本的な使命を守りながら、デザインと質感、燃費、テクノロジーを現代的にアップデートした。それこそが2027年型アトラスの最大の特徴である。