「ダークホースSCは、シェルビーGT500を焼き直しただけのクルマなのではないか」。
登場当初、そんな声も聞かれた2026年型フォード・マスタング・ダークホースSC。しかし、MotorTrendが実際に計測した数字は、その見方が大きな誤解だったことを示した。
5.2リッター・スーパーチャージドV8から795hpを発生するダークホースSCは、0-60mph(約96km/h)をわずか2.9秒で駆け抜け、1/4マイル(約402m)も10.8秒で走り切った。
これは、MotorTrendがこれまでテストしてきたシェルビーGT500を明確に上回る数字だ。
しかも、その性能はフォードの究極のマスタングともいえるGTDにもかなり近い。
0-60mphは2.9秒
まず注目したいのが、0-60mph加速だ。
ダークホースSCは2.9秒を記録した。
さらに、
- 0-30mph:1.3秒
- 0-40mph:1.8秒
- 0-50mph:2.4秒
- 0-60mph:2.9秒
- 0-70mph:3.6秒
- 0-80mph:4.3秒
- 0-90mph:5.2秒
- 0-100mph:6.2秒
という結果になった。
特に驚かされるのは、100mph(約161km/h)までわずか6.2秒しかかからないことだ。
2020年型シェルビーGT500では、0-60mphが3.6秒、0-100mphが7.0秒だった。
つまり、ダークホースSCは60mphまでで0.7秒、100mphでは0.8秒もGT500より速い。
これは単なるエンジン出力の違いだけでは説明できない。
1/4マイルは10.8秒
ドラッグレースで重要となる1/4マイルでは、ダークホースSCが**10.8秒、終速131.8mph(約212km/h)**を記録した。
対するシェルビーGT500は11.3秒、131.6mph。
わずか0.2mphしか終速に差がないにもかかわらず、ダークホースSCは0.5秒も早くゴールしている。
これは発進から中間加速までの差が非常に大きいことを意味する。
ダークホースSCは単純に最高速度が速いのではない。
スタート直後から効率よくパワーを路面へ伝え、短い距離で一気に速度を伸ばしている。
そこが今回のテストで最も重要なポイントだ。
795hpのV8を搭載
ダークホースSCの心臓部は、5.2リッター・スーパーチャージドV型8気筒。
最高出力は795hp/7,200rpm、最大トルクは660lb-ft/4,600rpmに達する。
シェルビーGT500も同じ5.2リッター・スーパーチャージドV8を搭載していたが、最高出力は760hp、最大トルクは625lb-ftだった。
つまりダークホースSCは、
+35hp、+35lb-ft
というスペックアップを受けている。
しかし、35hpの増加だけでは、0-60mphで0.7秒、1/4マイルで0.5秒という大幅なタイム短縮を説明できない。
では、なぜこれほど速くなったのか。
答えは「ローンチコントロール」にある。
GT500になかったローンチコントロール
実は、シェルビーGT500には本格的なローンチコントロールが存在しなかった。
7速デュアルクラッチトランスミッションと大パワーを組み合わせたGT500を、ホイールスピンさせず、なおかつエンジンを失速させずにスタートさせるのは簡単ではなかった。
そのためGT500で最高の加速を引き出すには、ドライバーによる細かな操作が必要だった。
フォードはその経験をもとに、ダークホースSCでは発進制御を大幅に改善した。
操作方法もシンプルだ。
ステアリングホイールに設けられたボタンからDrag Stripモードを選択し、センターディスプレイからローンチコントロールを起動する。
システムの初期設定は2,500rpm。
ただし、路面が完全に整備されたドラッグストリップではない場合、この回転数では高すぎる。
MotorTrendが最も速い結果を得たのは、1,600rpmだった。
これは設定可能な最低回転数のひとつ上にあたる。
両方のペダルを踏み、エンジン回転を設定値で安定させる。
そしてブレーキを離す。
すると、ダークホースSCはタイヤを軽く鳴らしながら、一気に前へ飛び出す。
795hpのV8が放つサウンドとともに、マスタングは猛烈な勢いで加速していく。
GT500より速い理由は「パワー」だけではない
ダークホースSCのパワーアップはもちろん重要だ。
しかし、それ以上に大きな意味を持つのが、ローンチコントロールとタイヤ、そしてホイールだ。
今回のテスト車には、Michelin Pilot Sport Cup 2 Rを装着。
このタイヤはフォード・レーシングによってダークホースSC専用にチューニングされている。
さらに、カーボンファイバーホイールによってばね下重量と回転慣性も抑えられている。
これらはすべて、36,500ドルのTrack Packageに含まれる装備だ。
つまり、今回の驚異的な加速タイムは、795hpのV8だけで作られたものではない。
エンジン、DCT、ローンチコントロール、ハイグリップタイヤ、軽量ホイール。
それぞれが組み合わさることで、ダークホースSCはスタート直後から圧倒的な加速力を発揮している。
最高峰のマスタングGTDにはどこまで迫った?
では、フォードの究極のマスタングであるGTDと比べるとどうなのか。
MotorTrendのテストでは、GTDは0-60mphを2.7秒で記録。
1/4マイルは10.5秒、134.9mphだった。
対するダークホースSCは2.9秒、10.8秒/131.8mph。
数字だけを見ればGTDのほうが速い。
しかし、その差はわずかだ。
しかもGTDの価格はベースで約33万ドル、テスト車では推定438,200ドルに達する。
一方、ダークホースSCのベース価格は108,085ドル。
今回のテスト車でも149,325ドルだった。
もちろんGTDには、ダークホースSCにはない専用シャシーや空力性能などが与えられている。
それでも、ドラッグストリップでの加速性能だけを見れば、ダークホースSCはGTDに非常に近いところまで迫っている。
2027年型コルベット・グランドスポーツとも比較
さらにMotorTrendは、2027年型シボレー・コルベット・グランドスポーツとも比較している。
グランドスポーツはダークホースSCより260hpも少ない。
それでも0-60mphでは2.7秒を記録し、ダークホースSCより0.2秒速い。
ところが1/4マイルでは状況が逆転する。
ダークホースSCはグランドスポーツより0.2秒速くゴールした。
つまり、発進直後ではミッドシップレイアウトを持つコルベットが有利でも、高速域まで含めた加速では795hpのマスタングが猛烈な勢いで追い上げる。
ダークホースSCの実測データ
2026 Ford Mustang Dark Horse SC
- エンジン: 5.2L スーパーチャージドV8
- 最高出力: 795hp/7,200rpm
- 最大トルク: 660lb-ft/4,600rpm
- トランスミッション: 7速DCT
- 駆動方式: 後輪駆動
- 車両重量: 4,105lb(約1,862kg)
- 前後重量配分: 56:44
- ベース価格: 108,085ドル
- テスト車価格: 149,325ドル
- Track Package: 36,500ドル
MotorTrend実測
| テスト | ダークホースSC | シェルビーGT500 | マスタングGTD |
|---|---|---|---|
| 0-30mph | 1.3秒 | 1.8秒 | 1.1秒 |
| 0-40mph | 1.8秒 | 2.4秒 | 1.7秒 |
| 0-50mph | 2.4秒 | 3.0秒 | 2.2秒 |
| 0-60mph | 2.9秒 | 3.6秒 | 2.7秒 |
| 0-70mph | 3.6秒 | 4.3秒 | 3.3秒 |
| 0-80mph | 4.3秒 | 5.1秒 | 4.1秒 |
| 0-90mph | 5.2秒 | 6.0秒 | 4.8秒 |
| 0-100mph | 6.2秒 | 7.0秒 | 5.8秒 |
| 1/4マイル | 10.8秒 | 11.3秒 | 10.5秒 |
| 1/4マイル終速 | 131.8mph | 131.6mph | 134.9mph |
総評――これは「GT500の焼き直し」ではない
2026年型フォード・マスタング・ダークホースSCは、確かにシェルビーGT500と多くのハードウェアを共有している。
しかし、実際の性能はまったく同じではない。
795hpへパワーアップした5.2リッターV8に加え、ローンチコントロールを備えた7速DCT、専用チューニングのPilot Sport Cup 2 R、そしてカーボンファイバーホイールを組み合わせることで、GT500を明確に上回る加速性能を実現した。
0-60mphは2.9秒。
0-100mphは6.2秒。
1/4マイルは10.8秒。
特にGT500との比較では、その進化がはっきり分かる。
GT500は760hpを誇るモンスターマシンだった。
しかしダークホースSCは、単純に35hpを上乗せしただけではない。
フォードは、GT500で課題となっていた発進性能をローンチコントロールによって改善し、タイヤとホイールまで含めてトラクション性能を引き上げた。
その結果、ダークホースSCは「GT500の再利用」ではなく、GT500の弱点を克服した新世代のハイパフォーマンス・マスタングへと進化している。
そして、33万ドルを超えるGTDにわずか0.2秒差まで迫る加速性能を、10万ドル台から手に入れられることも大きなポイントだ。
マスタングの歴史を振り返っても、795hpという数字だけでなく、10秒台前半の1/4マイルを誰でも狙えるほどの発進性能を備えたことこそ、ダークホースSCの本当の進化と言えるだろう。