メルセデス・ベンツのエントリーモデルだったCLAが、大きく生まれ変わった。
2027年型Mercedes-Benz CLA350 4MATICは、これまでのCLAとはまったく違う。新開発のMMA(Mercedes-Benz Modular Architecture)を採用したEVとして生まれ変わり、800V電気システム、新しいMB.OSインフォテインメント、そして将来的にはハンズオフでのポイント・トゥ・ポイント運転を可能にする先進運転支援システムまで導入する。
つまり、このCLAは単なる新型車ではない。
これからのメルセデス・ベンツがどの方向へ進んでいくのかを示す、技術的なパイオニアなのだ。
ただし、すべてが完璧というわけではない。
圧倒的な航続距離と急速充電性能を持つ一方で、荒れた路面ではサスペンションが落ち着きを失い、アクセルペダルは過敏。さらに、車両の起動や空調など、一見すると理解しにくい操作ロジックも残されている。
CLAのイメージを一度リセットしたほうがいい
初代CLAが登場したのは2013年。
当時のCLAは、メルセデス・ベンツのファミリーの中でも少し異質な存在だった。コンパクトなボディにプラスチッキーなインテリア、硬い乗り心地、4気筒エンジン。
三つ星のエンブレムを掲げるには、少し物足りないという評価も少なくなかった。
2019年に登場した2代目では多くの部分が改善されたものの、「小さく、安価なメルセデス」というイメージは簡単には消えなかった。
しかし、2027年型CLA350 4MATICでは、その先入観をいったん捨てたほうがいい。
新型CLAはEVとなり、MMAプラットフォームを採用。新しいパワートレインだけでなく、今後のメルセデス全体へ展開されることになる新世代のインフォテインメントシステムも搭載している。
CLAは、ファミリーの中で肩身の狭い存在から、メルセデスの未来を先取りするモデルへと変わったのだ。
EVなのにガソリン車のようにロングドライブできる
新型CLA350の最大の魅力は、なんといっても航続距離と充電性能だ。
EPAによる公式航続距離は312マイル(約502km)。
ところがMotorTrendの70mph(約113km/h)定速ロードトリップテストでは、フル充電の95%だけを使って368マイル(約592km)を走破した。
これは公式値を18%も上回る数字で、MotorTrendのテスト史上でも新記録となる上振れ幅だった。
EVでは、カタログ値と実際の高速道路走行での航続距離に大きな差が生じることも珍しくない。
しかしCLA350では、その差がむしろプラス方向に働いた。
さらに驚かされるのが急速充電性能だ。
BP Pulseの400kW急速充電器に接続すると、わずか15分で198マイル(約319km)分の航続距離を回復。
30分なら322マイル(約518km)分を追加できた。
つまり、満充電で出発すれば、70mphでおよそ10時間走り続け、途中で30分だけ充電すればさらに走行を続けられる計算になる。
EVによる長距離移動において、これは非常に大きな意味を持つ。
メルセデス初の800V電気システム
これほどの航続距離と充電性能を可能にした背景には、新型CLAの技術的な特徴がある。
CLA350はメルセデス・ベンツとして初めて800Vの電気アーキテクチャを採用した。
最大320kWの充電能力を持ち、さらに空気抵抗を抑えた低いフロントセクションと流麗なボディ形状によって、高速走行時のエネルギー消費を抑えている。
リアモーターには2速トランスミッションも組み合わされる。
EVのモーターは一般的に単一ギアで十分な性能を発揮できるが、高速域では2段目のギアを使うことで効率を高められる。
CLA350は、こうした技術を積み重ねることで、EVの弱点とされてきた長距離移動と充電時間を大幅に改善している。
349馬力のデュアルモーターAWD
パワートレインも非常に強力だ。
フロントには107hpの永久磁石モーター、リアには268hp・247lb-ft(約335Nm)の永久磁石モーターを搭載。
システム合計出力は349hp、最大トルクは380lb-ft(約515Nm)に達する。
四輪駆動システムによって、0-60mph(約97km/h)加速はわずか4.2秒。
先代のガソリン車CLA250 4MATICより1.5秒も速い。
アクセルを踏み込めば、EVらしい瞬時のトルクによって滑らかに速度を上げていく。
エンジン車のような変速ショックやターボラグはない。
その意味では、新型CLA350のパワートレインは先代モデルから劇的に進化したと言える。
パドルで回生ブレーキを切り替えられる
ステアリングホイールのパドルシフトは、通常のトランスミッションの変速に使うものではない。
ここでは回生ブレーキの強さを切り替えるために使われる。
ワンペダルドライブから、ほとんど減速しないコースティング、そしてガソリン車に近い自然な減速感まで、ドライバーの好みに合わせて選択できる。
これはEVに慣れていないドライバーにとっても扱いやすいシステムだ。
ただし、ワンペダルモードではアクセルペダルの反応がかなり敏感になる。
ペダルをわずかに動かしただけでもクルマの挙動が変化しやすく、大きな段差を通過した際には右足が揺さぶられ、その結果としてクルマが一瞬前へ飛び出したり、急に減速したりすることもあったという。
さらに、アクセルを床まで踏み込んで加速すると、約65mph(約105km/h)付近で2速へ変速する瞬間に駆動力が一瞬途切れる。
EVとしては少し奇妙な感覚だ。
乗り心地は「メルセデスらしさ」にあと一歩
CLA350の乗り心地は、基本的には快適だ。
しかし、SクラスやEクラス、あるいはCクラスのような「路面を滑るように走る」メルセデスを期待すると、少し違う。
大きな段差を乗り越えた際、サスペンションが最初の入力を受け止めた後、ボディがバネのように上下することがある。
ダンピングが十分ではなく、荒れた路面では車体の動きをうまく抑え込めない。
これはCLA350がまだコンパクトクラスのモデルであることを考えれば理解できるが、メルセデスのブランドイメージを考えると気になる部分だ。
ステアリングには適度な重さがあり、操作感そのものは悪くない。
しかし、このクルマはスポーツセダンを目指しているわけではない。
車重はかなり重い
CLA350は全長185.9インチ(約4724mm)。
これはTesla Model 3とほぼ同じサイズだ。
しかし、車重は4,722lb(約2,142kg)に達する。
同じ185.9インチのModel 3と比べて約700lb(約318kg)も重い。
さらにテスト車には、航続距離を優先した19インチのMichelin e-Primacy 2サマータイヤが装着されていた。
そのため、コーナリング性能はスポーツセダンとして見るとそれほど突出していない。
MotorTrendのテストでは、60mphからの停止距離が110フィート(約33.5m)、最大横Gは0.87Gだった。
決して悪い数字ではないが、グリップ重視のタイヤを履いた一般的なセダンでも達成可能なレベルだ。
CLA350は、速さよりも効率と快適性を重視したクルマなのである。
通勤車としては非常に優秀
一方で、日常使いでは非常に魅力的だ。
フロントシートは素晴らしく、体をしっかり支えながら快適に座れる。
ボディサイズも扱いやすく、電力消費も少ない。
そのため、毎日の通勤や長距離移動をこなすEVとしては非常に優秀だ。
ただし、後席には注意が必要だ。
先代CLAと同様に、後席は短時間の移動向き。
足元のスペースは十分とは言えず、クーペのように傾斜したルーフラインによってヘッドルームも制限される。
大人4人で長距離旅行をするなら、もう少し大きなメルセデスを選びたくなるだろう。
38インチMBUX Superscreen
インテリアで最も目を引くのは、標準装備の38インチMBUX Superscreenだ。
メーターパネル、中央のインフォテインメントディスプレイ、助手席ディスプレイを一枚の巨大なスクリーンとして横一面に配置している。
高解像度ディスプレイの表示は非常に美しい。
一方で、この巨大なスクリーンによって、従来メルセデスが得意としてきたインテリアデザインの魅力が薄れてしまったという側面もある。
ダッシュボード全体が巨大なディスプレイに覆われ、素材や造形そのものを楽しむ余地が少なくなった。
もっとも、エアコン吹き出し口の造形には、相変わらずメルセデスらしいこだわりが感じられる。
新しいMB.OSは非常に優秀
スクリーンの裏側で動作する新世代のMB.OSは、かなり完成度が高い。
アイコンは大きく、メニュー構成も分かりやすい。
ナビゲーション画面も情報量と見やすさのバランスが取れている。
さらに、従来のメルセデスから受け継いだ「Zero Layer」ホーム画面によって、地図やデジタル壁紙の上にオーディオや電話のウィジェットを表示できる。
深い階層のメニューを開かなくても、主要な機能へアクセスできるのは便利だ。
Spotifyなどのストリーミングアプリを車両へ直接インストールすることも可能で、Apple CarPlayやAndroid Autoも利用できる。
AIを利用した音声アシスタントも、簡単な質問や操作であれば比較的よく機能する。
ただし、対応していないことを尋ねると、できない理由を説明することなく電子音を鳴らして会話を終了してしまうことがある。
ここはまだ改善の余地がある。
「高級車なのに、なぜ?」と思わせる操作系
新型CLA最大の問題は、実は走りではなく操作系かもしれない。
例えば、4枚のウインドウを操作するのに2つのスイッチしか用意されていない。
さらに、6万7,580ドルのテスト車なのにエアコンはシングルゾーン。
しかも、ファン速度を手動で直接設定することもできない。
空調画面にはファン速度の設定が存在するように見えるが、実際には常時オート制御されるシステムの「最大ファン速度」を設定しているだけだ。
そのため、システムが希望する最低風量を下回ってしまった場合、温度や最大風量を調整して、システムを思い通りに動かす必要がある。
高級車としては、少し理解しにくい。
起動ロジックも不可解
さらに問題なのが、車両の起動と走行可能状態に関するロジックだ。
新型CLAは起動に少し時間がかかり、完全な駆動力を得るにはシフトをDまたはRへ入れる必要がある。
これは従来のクルマに慣れているドライバーにとって奇妙な挙動だ。
例えば、暑い日に子どもを乗せる前に窓を開けて車内の熱気を逃がしたいとする。
ところがCLAでは、まずDレンジへ入れなければならない。
さらにPレンジへ戻すと、クルマが停止状態へ移行してエアコンまで止まってしまうことがある。
急速充電器につないだ状態で、思ったように車両を走行可能状態へ移行できないケースもあった。
新しい操作体系を導入すること自体は悪くない。
しかし、そのロジックがドライバーにとって直感的でないことが問題なのだ。
先進運転支援はまだ「序章」
現在のCLA350では、標準のアダプティブクルーズコントロールに加え、車線中央維持、車線変更支援、赤信号や一時停止標識での停止などを追加する高度な運転支援パッケージが1,950ドルのオプションとして用意されている。
機能自体は十分に機能する。
ただし、メルセデスや自動車業界の基準を大きく前進させるほどではない。
そこで期待されるのが、今後導入予定の「MB.Drive Assist Pro」だ。
メルセデスによれば、2026年末までに導入される予定で、TeslaのFull Self-Drivingを意識したポイント・トゥ・ポイントの運転支援を目指している。
ドライバーはステアリングホイールに軽く触れている必要があるものの、より高度な自動運転に近い体験を提供することになる。
MotorTrendはサンフランシスコでのデモ走行を助手席から体験し、かなり強い印象を受けたとしている。
ただし、メルセデスはこれまでにも先進運転支援技術を大々的にアピールしながら、実際の導入まで時間がかかった例がある。
そのため、期待しつつも慎重に見ているというのがMotorTrendの評価だ。
約7万ドルのCLAに価値はあるのか?
新型CLAは、過去のCLAより明らかに高級感が増している。
新世代のMB.OS、38インチMBUX Superscreen、そして非常に優秀なEVパワートレイン。
これらによって、「小さくて安いメルセデス」という従来のイメージからは大きく前進した。
しかし、問題は価格だ。
ベース価格は51,950ドル。
今回のテスト車は67,580ドルに達した。
アメリカ市場では「小さいクルマ=安いクルマ」というイメージが強いため、コンパクトなCLAに約7万ドルを支払うことには、どうしても疑問が残る。
もっとも、今後はより安価なハイブリッド仕様のCLAも登場する予定だ。
それによってCLAファミリー全体の価格帯はより広がることになる。
本当に重要なのは、このクルマの「次」だ
2027年型CLA350 4MATICは、完璧なEVではない。
荒れた路面ではサスペンションが落ち着きを失う。
アクセルペダルは敏感で、操作系には理解しにくい部分もある。
後席も広くない。
それでも、このクルマがメルセデスにとって重要な一台であることは間違いない。
なぜなら、CLA350が示している技術は、今後より大型のメルセデスへ展開されていく可能性が高いからだ。
約600kmに迫る実走航続距離。
15分で約319km分を充電できる急速充電性能。
800Vアーキテクチャ。
2速トランスミッションを備えたEVパワートレイン。
そして、直感的に使える新しいMB.OS。
これらがSクラスやEクラスなど、より大きく高価なモデルへ搭載されるなら、メルセデスのEVは一気に競争力を高める可能性がある。
CLA350は、その完成形ではない。
むしろ、これから始まる新しいメルセデスの「最初の一歩」なのだ。
2027年型Mercedes-Benz CLA350 4MATIC スペック
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| 車両 | 4ドア・5人乗りEVセダン |
| 駆動方式 | 4WD |
| モーター | 前後2基・永久磁石式 |
| フロントモーター | 107hp |
| リアモーター | 268hp / 247lb-ft |
| システム最高出力 | 349hp |
| システム最大トルク | 380lb-ft(約515Nm) |
| トランスミッション | 1速固定比 / 2速AT |
| バッテリー | 85.0kWh NMCリチウムイオン |
| 車重 | 4,722lb(約2,142kg) |
| 前後重量配分 | 47:53 |
| ホイールベース | 109.8インチ(約2,789mm) |
| 全長×全幅×全高 | 185.9×73.0×57.8インチ |
| タイヤ | Michelin e-Primacy 2 MO |
| フロント | 225/40R19 93W XL |
| リア | HL255/35R19 99W XL |
| EPA燃費 | 120 / 115 / 118 mpg-e |
| EPA航続距離 | 312マイル(約502km) |
| 70mph実走航続距離 | 368マイル(約592km) |
| 急速充電 | 15分で198マイル分 / 30分で322マイル分 |
| 0-60mph | 4.2秒 |
| 1/4マイル | 12.9秒 @ 108.3mph |
| 60-0mph | 110フィート(約33.5m) |
| 最大横G | 0.87G |
| フィギュアエイト | 25.9秒 @ 0.74G |
| ベース価格 | 51,950ドル |
| テスト車価格 | 67,580ドル |