日産が北米市場でハイブリッド攻勢に乗り出す。その中心的な役割を担うのが、2027年型「ローグ ハイブリッド」に搭載される第3世代のe-POWERだ。
e-POWERそのものは決して新しい技術ではない。すでに海外市場ではさまざまなモデルに採用されており、今回試した第3世代システムも、以前に日産キャシュカイで体験したものの進化版にあたる。
ただし、今回のe-POWERはこれまでより大型・重量級の車両に適した仕様へと改良されている。日産にとって、北米で本格的にハイブリッド市場へ参入するための重要な一歩となるシステムだ。
ガソリンエンジンは「発電専用」
e-POWERの最大の特徴は、その構造にある。
2027年型ローグ ハイブリッドには、1.5リッター直列3気筒ターボエンジンが搭載される。ただし、一般的なガソリン車のようにエンジンが直接タイヤを駆動するわけではない。
このエンジンの役割は、あくまで発電だ。
エンジンで発電した電力によってバッテリーを充電し、その電力を使って電気モーターが車輪を駆動する。つまり、走行中に車輪とガソリンエンジンは直接つながっていない。
日産はこの方式を「シリーズハイブリッド」と位置づけており、e-POWERでは100%電気モーターによって車輪を駆動する。トヨタなどの一般的なハイブリッドシステムとは、この点が大きく異なる。
ホンダのハイブリッドシステムも状況によってはシリーズハイブリッドに近い動作をするが、高速走行などではエンジンを機械的に駆動系へ接続することがある。一方、日産のe-POWERはそこまで行わず、エンジンを発電専用として使うことにこだわっている。
225馬力の電動AWD
2027年型ローグ ハイブリッドでは、前後に電気モーターを搭載することで4WDを実現する。
システム全体の最高出力は225hp。前輪側には202hp・243lb-ftのモーター、後輪側には134hp・144lb-ftのモーターを搭載する。
発電を担当する1.5リッター直列3気筒ターボエンジンは148hp、171lb-ftを発生する。
燃費については、日産がEPA基準で市街地40mpg、高速道路36mpg、複合38mpgを見込んでいる。推定航続距離は複合サイクルで504マイルに達する。
EVのようなワンペダルドライブ
今回の試乗で特に興味深かったのが、ハイブリッド車でありながら「ワンペダルドライブ」を採用していることだ。
アクセルペダルから足を離すと回生ブレーキが作動し、モーターが発電機として働くことでバッテリーを充電する。同時に車両へ減速力が発生する。
ワンペダル走行といえば、一般的にはEVをイメージする機能だ。もちろんe-POWERの減速感は完全なEVほど強くない。それでも、アクセルを戻すだけでローグ ハイブリッドは最終的に完全停止まで持っていくことができた。
しかも、その停止はかなり穏やかだ。
ワンペダルドライブをオフにすると、新たに「Smooth Stop」機能も利用できる。これはブレーキペダルを踏み込んだ際、ドライバーがペダル操作を滑らかに行うのを車側が補助するような機能だ。
ただし、この機能については評価が分かれるところだろう。多くのドライバーは数日も運転すれば自然に滑らかな停止を身につけるからだ。
驚くほど静かで滑らかなパワートレイン
今回の試乗で最も印象的だったのは、実はワンペダルドライブでも新しい運転支援機能でもない。
e-POWERのパワートレインそのものだった。
第3世代のシステムは非常に静かで、そして驚くほど滑らかに動作する。
特に直列3気筒エンジンを発電用として使用していることを考えれば、この滑らかさは大きな成果と言える。3気筒エンジンは本来、4気筒や6気筒に比べて振動が出やすい。しかし、e-POWERではエンジンの回転数を限定された範囲に保ちながら発電することで、その弱点をうまく抑えている。
日産によれば、第3世代e-POWERは第2世代と比較して、高速走行時の燃費を15%改善し、総合的な燃費性能も9%向上しているという。
エンジンの存在を感じさせないことが狙い
e-POWERではエンジンが車輪を直接駆動しないため、一般的なハイブリッドとは加速フィールも異なる。
通常のハイブリッドでは、小さな電気モーターが発進時のトルクを補い、その後エンジンが本格的に力を発揮するという流れになる。その過程で、わずかながら加速感が変化することもある。
日産が目指したのは、そうした不連続な加速フィールをなくすことだった。
電気モーターならではの瞬時かつ一定したトルクによって、EVに近い滑らかな加速を実現する。そしてエンジンは、その後方で必要な電力を作り続ける。
実際に試乗してみると、e-POWERはハイブリッドらしい感覚を完全に消しているわけではない。それでも、動力の切り替わりは非常に滑らかで、ほとんど違和感がない。
知らずに運転していれば、発進後に感じるわずかなパワーの変化を、エンジンが車輪へ追加の力を与えているものだと思ってしまうかもしれない。
第2世代から大きく進化した静粛性
日産は第3世代e-POWERの開発において、騒音、振動、ハーシュネスの低減にも力を入れた。
第2世代のe-POWERを搭載したキャシュカイと比較すると、その違いは明確だったという。
第2世代では加速時にパワートレインの作動音が比較的はっきり聞こえた。しかし第3世代では、より剛性の高い構造にパワートレインを搭載したことで、作動音が大幅に小さくなった。
あまりにも静かになったため、今度は逆にタイヤや路面から伝わってくるロードノイズが意識されるほどだ。
荒れた路面での乗り心地も改善されている。従来型では多少の硬さや振動が感じられたのに対し、新型e-POWERでは路面の凹凸をより安定して受け止め、快適性が向上している。
パワートレインやボディから伝わる振動も少なくなり、車体全体の剛性感が高まったことで、車そのものが軽快に動くようにも感じられた。
雪道や滑りやすい路面でもフラットな姿勢を維持
第3世代e-POWERでは、加速時の振動だけでなく、車体のピッチングや姿勢変化も抑えるように設計されている。
特に雪道や滑りやすい路面では、モーターをミリ秒単位で制御し、車体が沈み込んだり前後に大きく揺れたりするのを抑えるという。
日産のパワートレイン・EVエンジニアリング部門を率いる稲島俊一氏によれば、モーター制御によって雪の中でも車体をフラットな状態に保つことを狙っている。
これは単に「電動だから滑らか」という話ではない。電気モーターを極めて細かく制御できることを、車体の姿勢制御にも積極的に利用しているわけだ。
プロパイロットも進化
パワートレイン以外にも、新型ローグ ハイブリッドには改良された「ProPilot Assist」が搭載される。
アダプティブクルーズコントロールと車線中央維持機能を組み合わせた日産の運転支援システムで、今回の新型では車両の追従性能を改善するとともに、低速の渋滞時にはハンズオフ走行にも対応する。
e-POWERによる滑らかな走行フィールと組み合わせれば、特に市街地や渋滞、高速道路での長距離移動に適したSUVになりそうだ。
北米では2027年初頭から本格展開
日産は北米市場でハイブリッドモデルのラインアップを持たなかったことを、現在では明確な誤算だったと認めている。
これまでの北米市場では、内燃機関車とEVの間を埋める選択肢が不足していた。日産は世界の他地域ではすでに複数のハイブリッド車を販売しており、アライアンスパートナーの三菱も北米でプラグインハイブリッド技術を展開している。
そこで日産は今後24カ月の間に、北米市場におけるハイブリッドの空白を埋めることを目指している。
第4世代となるローグは2026年に生産を開始し、2027年初頭にはデュアルモーター4WD仕様のe-POWERを北米市場へ投入する予定だ。ローグが米国でe-POWERを採用する最初の日産車となるが、これが最後ではない。
e-POWERを他のモデルにも拡大へ
日産は今後、e-POWERをほかのモデルにも広げていくと見られている。
記事では、ローグより小型のモデルであるムラーノや次期セントラなどへの展開が有力候補として挙げられている。
一方、3列シートのパスファインダーのような大型モデルへの採用については、牽引性能との相性が良くないことから可能性は低いとされている。
つまりe-POWERは、都市部での日常走行や高速道路での移動を重視するSUVや乗用車との相性が良いシステムと言えそうだ。
2027年型ローグ ハイブリッドの価格
北米市場でのエントリーグレードは「SV」で、価格は37,065ドルから。
その上に39,065ドルの「SR」、最上級の45,065ドル「Platinum」が設定される。
2026年秋にディーラーへ最初に導入されるモデルは、Tech Packageを装備したSR。大型ディスプレイ、改良型360度カメラ、ProPilot Assist、パノラミックサンルーフなどを追加し、価格は43,065ドルとなる。
そのほかのグレードについては2027年初頭から順次投入される予定だ。
2027 Nissan Rogue Hybrid 主要スペック
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| ベース価格 | 37,065ドル |
| 駆動方式 | 前輪モーター+後輪モーター、AWD |
| エンジン | 1.5L 直列3気筒DOHC 12バルブ ターボ |
| エンジン出力 | 148hp / 171lb-ft |
| フロントモーター | 202hp / 243lb-ft |
| リアモーター | 134hp / 144lb-ft |
| システム最高出力 | 225hp |
| トランスミッション | CVT |
| 車両重量 | 4,100~4,200lb(メーカー推定) |
| ホイールベース | 106.5インチ |
| 全長×全幅×全高 | 183.1×72.8×67.7インチ |
| 燃費(市街地/高速/複合) | 40 / 36 / 38mpg(メーカー推定) |
| 推定航続距離 | 504マイル |
| 発売時期 | 2026年末 |
※0-60mph加速タイムは現時点では公表されていない。
まとめ――日産が目指したのは「EVらしいハイブリッド」
2027年型ローグ ハイブリッドに搭載される第3世代e-POWERは、単に燃費を改善するためのハイブリッドシステムではない。
その最大の特徴は、ガソリンエンジンを発電専用とし、車輪を常に電気モーターで駆動するという考え方にある。
その結果、EVのような滑らかな加速フィールとワンペダルドライブを実現しながら、充電設備を必要としないというハイブリッドならではの利便性も確保している。
さらに第3世代では、従来型で課題となっていたエンジン音や振動、荒れた路面での乗り心地も大きく改善された。
もちろん、日産にとって最大の課題は、この独特なシステムを消費者にどう説明するかだろう。
「これはハイブリッドなのに、走りはほとんどEV」というe-POWERの特徴がユーザーに伝われば、EVへ完全移行するにはまだ不安がある一方、従来型ハイブリッドよりも電動車らしい走りを求める層にとって、非常に魅力的な選択肢になる可能性がある。
2027年型ローグ ハイブリッドは、日産が北米市場でハイブリッド戦略を立て直すための最初の一台。そして第3世代e-POWERは、日産が考える「EVとハイブリッドの中間」を具体的な形にしたシステムと言えそうだ。