トヨタ・カムリといえば、アメリカでは長年にわたって「安心して選べるファミリーセダン」の代表格として知られてきた。
しかし、2007年型として登場した6代目カムリは、従来のイメージを少しずつ変えようとしていた。
より力強いエンジン、引き締められたシャシー、上質になったインテリア。そして、この世代から新たに加わったハイブリッドモデル。
さらに、従来は見た目だけのスポーティ仕様に近かった「SE」も、本格的に走りを意識したモデルへと進化した。
つまり新型カムリは、単に「売れるクルマ」を作ったのではない。
ファミリーセダンとしての実用性を維持しながら、走りや燃費、装備、質感まで幅広く引き上げたのである。MotorTrendが2007年のカー・オブ・ザ・イヤーに選出したのも、こうした総合力の高さがあったからだ。
ベストセラーが大きく変わった
1980年に日本でセダンとして登場して以来、カムリは世界中で1,000万台以上を販売。
特にアメリカでは圧倒的な人気を誇り、2005年には年間40万台以上を販売して、9年間のうち8回もアメリカで最も売れた乗用車の座を獲得していた。
そんなカムリにとって、2007年型は重要なモデルチェンジだった。
ボディサイズは先代とほぼ同じ。しかし、新型は全幅が約1インチ広く、全高が約1インチ低くなり、ホイールベースは2.2インチ延長された。
全長は189.2インチで先代と変わらない。
数字だけを見ると大きな変化には思えないが、ボディのラインを引き締めたことで、新型は従来よりもコンパクトかつスポーティに見えるようになった。
特に、先代カムリに対してユーザーから寄せられていた「無難すぎる」という不満に対し、デザイン面から明確に答えを出したモデルだった。
室内空間を少し整理し、荷室を拡大
ボディサイズがほぼ変わっていない一方、室内のパッケージングには細かな見直しが施された。
乗員スペースは若干減少したものの、リアシートのレッグルームは0.5インチ拡大。
さらに荷室容量は16.7立方フィートまで増加し、先代から1.7~2.2立方フィート拡大している。
つまり、単純に室内を広げるのではなく、実際に必要とされる部分へスペースを振り分けたわけだ。
そしてインテリアそのものも大きく進化している。
MotorTrendの試乗では、エントリーグレードのCEから上級のXLEまで、素材の質感や静粛性、組み立て精度が大幅に向上しており、上級グレードではレクサスを意識させるほどの仕上がりだと評価された。
当時のカムリとしては、かなり野心的な質感向上だったと言える。
5つのグレードで幅広いニーズに対応
2007年型カムリには、CE、LE、SE、XLEという4つのガソリン仕様に加え、新たにハイブリッドが設定された。
エントリーグレードのCEは、もはや「安いだけのベーシックモデル」ではない。
16インチホイール、タイヤ空気圧警告システム、6スピーカーCDオーディオ、パワーウインドウ、パワードアロック、クルーズコントロール、4輪ディスクブレーキ+ABS、電子スロットル、7エアバッグなどを標準装備。
2.4リッター直列4気筒と5速MTを組み合わせた仕様なら、2万ドルを切る価格からスタートする予定だった。
販売の中心となるLEは、8ウェイパワーシートやキーレスエントリーを追加。
さらに、2.4リッター4気筒に加えて3.5リッターV6を選択できた。
一方、SEはスポーティな走りを求めるユーザー向け。
17インチホイール、ブラックグリル、フォグランプ、前後スポイラー、レザーステアリング、メタリック調インテリア、そして専用の硬めのサスペンションを備える。
最上級のXLEでは、ヒーテッドドアミラー、440W・8スピーカーのプレミアムオーディオ、Bluetooth、デュアルゾーン・オートエアコン、ウッド調トリム、パワームーンルーフ、助手席パワーシートなどが用意された。
カムリは、一台ですべてを狙うのではなく、異なるユーザー層をきめ細かくカバーする戦略を採用していた。
3.5リッターV6がカムリを別物にした
新型カムリの中でも、最も大きな変化のひとつが3.5リッターV6エンジンだ。
従来型の3.3リッターV6から排気量を拡大し、最高出力は268hp、最大トルクは248lb-ftまで向上。
58hpもの大幅なパワーアップを果たしている。
このエンジンは当時のトヨタ・アバロンやRAV4にも採用されていたものだ。
カムリに搭載されたV6は、24バルブDOHC仕様。
MotorTrendがカリフォルニアのワインディングロードで試したSEでは、力強さと滑らかさを両立したフィーリングが印象的だったという。
アクセルを踏み込めばしっかりと加速する一方、パワーの出方は非常に自然。
そして、このV6と組み合わされる6速ATも完成度が高く、変速は素早く、しかも非常に滑らかだった。
当時のカムリとしては、かなりスポーティなパワートレインだった。
SEは本当に「スポーツ」になった
2007年型カムリで特に興味深いのがSEだ。
先代のSEもスポーティ仕様を名乗っていたが、その違いは主にホイールやスポイラー、ブラックのアクセントなど、外観上の演出にとどまっていた。
新型SEでは、その考え方が完全に変わった。
スプリングは15%硬くなり、ダンパーは50%強化。
さらにフロントのスタビライザーを太くし、フロア下には補強ブレースを追加。
ボディサイドのブラケットも強化され、リアシート背後にはV字型の補強バーまで装着された。
つまり、単に「スポーツグレードっぽく見せる」のではなく、シャシーそのものを作り変えている。
その結果、SEの走りは従来のカムリとは明らかに違っていた。
ステアリング操作に対するレスポンスが向上し、ボディの動きも引き締まっている。
MotorTrendは、そのフィーリングをトヨタ・アバロンよりもBMW 3シリーズに近いものと評価している。
ファミリーセダンとして知られるカムリが、ついに本当の意味で「スポーティ」と呼べる領域へ踏み込んだ瞬間だった。
V6 SEなら0-60mphは約6.5秒
268hpのV6と6速ATを搭載したSEは、当時のミドルサイズセダンとしてかなり速い。
トヨタの予測では、0-60mph加速は約6.5秒。
さらに高速道路では31mpgという燃費も期待されていた。
つまり、新型カムリSEは「速いけれど燃費が悪い」という昔ながらのスポーツセダンではない。
日常的な使い勝手を維持しながら、必要なときにはかなり力強い加速を楽しめる。
ファミリーカーとして買ったはずなのに、ワインディングロードへ持ち出しても意外と楽しめる。
それこそが、このSEの面白さだった。
そしてカムリにハイブリッドが登場
2007年型カムリのもうひとつの大きなニュースが、ハイブリッドモデルの追加だ。
搭載されるのは147hpのアトキンソンサイクル4気筒エンジンと45hpの電気モーター。
システム全体の最高出力は192hpに達する。
燃費性能は推定40mpg。
当時、ホンダ・アコードにもハイブリッドが存在していたが、アコードは3.0リッターV6+モーターによって253hpを発揮する高性能型だった。
それに対してカムリは、パワーよりも燃費を重視したキャラクターに設定されている。
つまり、アコードが「ハイブリッドでも速いクルマ」を目指したのに対し、カムリは「ハイブリッドだからこそ燃費がいいクルマ」を目指したわけだ。
192hpのハイブリッドは意外と力強い
ハイブリッドだからといって、走りが鈍いわけではない。
カリフォルニア州オーハイ周辺の山道で試乗したMotorTrendによれば、カムリ・ハイブリッドの192hpという出力は、2006年型カムリの旧3.0リッターV6を上回る。
電気モーター特有の静かな作動音はあるものの、全体的には滑らかで洗練されたフィーリング。
急勾配の山道でも必要十分以上の力強さを発揮し、日常の走行では不満を感じにくい仕上がりだった。
一方、車重は約3,600ポンド。
トヨタの推定0-60mphタイムは8.9秒で、253hpを発揮するアコード・ハイブリッドの6.6秒には及ばない。
しかし、カムリ・ハイブリッドの目的は速さではない。
重要なのは、十分な動力性能を確保しながら、40mpgという優れた燃費を実現したことだった。
ハイブリッドでも装備は充実
カムリ・ハイブリッドは、単純に燃費のためだけに装備を削ったモデルではない。
専用グリル、ブルー系ヘッドランプレンズ、LEDテールランプ、「Hybrid Synergy Drive」のバッジを装備。
さらに、ABS、トラクションコントロール、スタビリティコントロールを統合的に制御するVehicle Dynamics Integrated Managementも標準装備された。
オプションは比較的シンプルで、ムーンルーフ、JBLオーディオ+ナビ、レザー内装、シートヒーターなどに限定。
CDチェンジャー、パワーシート、オートエアコンなど、日常的に必要となる装備は標準で備えられていた。
当時の予想価格は約26,000ドル。
30,000ドルを超えるアコード・ハイブリッドよりも手頃な価格設定が期待されていた。
2007年型トヨタ・カムリ|主要スペック
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| ベース価格 | 19,500~26,500ドル(推定) |
| 駆動方式 | FF |
| ボディ | 4ドア・5人乗りセダン |
| 2.4L 4気筒 | 158hp / 161lb-ft |
| ハイブリッド | 147hp 4気筒+45hp電気モーター |
| ハイブリッドシステム出力 | 192hp |
| 3.5L V6 | 268hp / 248lb-ft |
| トランスミッション | 5速MT / 5速AT / CVT / 6速AT |
| 車両重量 | 3,300~3,600lb |
| ホイールベース | 109.3インチ |
| 全長×全幅×全高 | 189.2×71.7×57.5インチ |
| 0-60mph | 6.5~9.5秒(MotorTrend推定) |
| EPA燃費 | 22~43 / 31~37mpg(推定) |
| 米国発売 | 2006年3月 |
※数値はMotorTrendのアーカイブ記事に掲載された当時の仕様・推定値に基づいています。
まとめ――「無難なカムリ」というイメージを変えた一台
2007年型トヨタ・カムリは、単なるフルモデルチェンジではなかった。
長年にわたって「信頼性が高く、快適で、燃費もいいファミリーセダン」というイメージを築いてきたカムリが、そこに走行性能と多様性を加えたモデルだった。
3.5リッターV6は268hpを発揮し、SEでは強化されたサスペンションとボディによって、これまでのカムリとは明らかに違うハンドリングを実現。
一方でハイブリッドは、192hpという十分なシステム出力を確保しながら、約40mpgという優れた燃費性能を目指した。
そして、CEからXLEまで装備と価格帯を幅広く設定することで、カムリはより多くのユーザーに対応できるクルマになった。
特にSEの存在は大きい。
以前のカムリSEが「スポーティに見えるカムリ」だったとすれば、2007年型SEは**「本当に走りを楽しめるカムリ」**へと変わった。
それでも、カムリ本来の快適性や実用性は失っていない。
このバランスこそが、2007年型カムリがMotorTrendの2007年カー・オブ・ザ・イヤーに選ばれた理由のひとつだったのだろう。
ベストセラーであることと、退屈であることは同じではない。
2007年型カムリは、そのことを証明した一台だった。