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2026年型フォード・マスタングRTR試乗記――ドリフトを身近にする、史上最高のEcoBoostマスタング

「最もスリリングで、最も楽しく走れるターボチャージャー付きマスタング」。

2026年型フォード・マスタングRTRについて、フォードはそんな強気な表現を使っている。自動車メーカーのプレスリリースには、しばしば大げさな表現が並ぶものだ。グラフィックや大型スポイラーを追加しただけで「ダイナミック」だの「スポーティ」だのと表現されることも珍しくない。

だからこそ、MotorTrendも最初からその言葉を鵜呑みにはしなかった。

ところが、実際にステアリングを握ってみると印象は大きく変わった。2026年型マスタングRTRは、これまで試乗したEcoBoostマスタングの中で、最も強く「楽しい」と感じられるモデルだったのである。

RTRがマスタングに加えたもの

2026年型マスタングRTRは、単なるエアロパーツ装着車ではない。

RTR(Ready to Rock)Vehiclesを率いるプロドリフター、ヴォーン・ギッティン・ジュニアとフォードが共同開発した、いわば「ドリフト最適化仕様」のマスタングだ。

フォードが外部企業と工場生産のマスタングを共同開発するのは、シェルビーに続いてRTRが2社目となる。

RTRは約4年をかけてこのモデルを開発。フォードにとっては若い自動車ファンを取り込むためのマーケティング戦略という側面もあるが、実際のクルマを見ると、それだけではないことが分かる。

ボディには専用グラフィックやウイングが備わるものの、本当の魅力はその下にある。

ドリフトのために作られたシャシー

マスタングRTRには、RTRがフォードと共同開発した電子式「Drift Brake」が標準装備される。

さらに3.55ファイナルのTorsenリミテッドスリップデフ、Active-Valve Performance Exhaust、GT Performance Package用のブレーキ、そしてGT用ステアリングラックを採用。

フロントには6ピストン、リアには4ピストンのBremboキャリパーが装着される。

ステアリングラックは通常仕様より72mmもストロークを増やしており、ドリフト中により大きなステアリング操作が可能になっている。

さらに、フロントのキャンバーを調整できるストラットトップマウントも採用された。

サスペンション関連では、Mustang Dark Horseからアンチロールバーと強化リアサブフレームを流用。そしてMagneRideサスペンションも設定されている。

このMagneRideは、通常の走行性能だけでなく、大きなドリフトアングルを作った際にもクルマの動きを邪魔しないようにチューニングされている。

Trackモードのスタビリティコントロールも通常のEcoBoostより大きなスリップアングルを許容する。

つまりRTRは、見た目だけの「ドリフト仕様」ではない。

Ford GT由来のアンチラグが効く

もうひとつ、このクルマの走りを大きく変えているのがエンジンのツインスクロールターボ用アンチラグシステムだ。

これはFord GTスーパーカーから受け継いだ技術で、現在ではFord Raptorにも採用されている。

仕組みそのものは複雑ではない。アクセルを戻している状態でもスロットルを開けておくことで、ターボチャージャーの回転を維持する。そして再びアクセルを踏み込んだ瞬間、ターボが素早く立ち上がる。

ドリフトでは、エンジンがパワーバンドから外れてしまうとリアタイヤを回し続けるのが難しくなる。そのため、このシステムはドリフトのために開発された。

しかし実際には、直線加速でもコーナー出口でも、そのレスポンスの良さをはっきり感じられる。

2.3L直列4気筒ターボは、標準状態で315hp、350lb-ftを発生。

さらにディーラーで施工するFord Performanceの専用パワーマップを選べば、350hp、400lb-ftまで引き上げられる。

ソフトウェアアップデートの価格は販売店や条件によって異なるものの、およそ800ドルが目安だ。

いよいよドリフトコースへ

今回の試乗では、カリフォルニア州ソノマからThunderhill Racewayまで一般道を走り、サーキットのWestコースを数周した後、RTRが用意したフラットなドリフトコースで本領を試した。

ロードコースでは、わずか3周だったこともあり、限界域での挙動を完全に判断するには時間が足りなかった。

ただし、ステアリングやアクセル、ブレーキに対するレスポンスは良好。プロドライバーのベン・ホブソンがステアリングを握った同乗走行では、コーナー進入時にシャシーを適度に旋回させる姿も確認できた。

一方、10速ATには少し癖がある。

サーキットを常に全開に近いペースで走っていると、どのギアを選ぶべきか、いつシフトアップすべきかをトランスミッション自身がかなり正確に判断してくれる。

しかし、ペースを75%程度に落とすと話は別だ。

この場合はマニュアルモードに切り替え、パドルシフトで自分自身がギアを選んだほうが走りやすい。

もっとも、RTRの本当の目的はロードコースでのラップタイムではない。

ドリフトは驚くほど簡単

ドリフトコースに入ると、このクルマのキャラクターが一気に明確になる。

ギッティンとRTRのスタッフから操作方法を教えてもらいながら、電子式Drift Brakeを引いてリアタイヤを滑らせる。

そこからアクセルとステアリングを使ってスリップアングルを大きくし、その状態を維持していく。

これが驚くほど簡単にできる。

RTR専用の19×9.5インチホイールを4輪に装着し、タイヤは255/40サイズのGoodyear Eagle F1を採用。

さらにホイールのオフセットは30mmで、通常より約10~15mm外側に張り出す。そのため、車高やボディ形状を大きく変えなくても、かなりアグレッシブなスタンスになる。

そして、このGoodyearを白煙まみれにするのは難しくない。

Drift Brakeでリアを滑らせ、アクセルでスライドをコントロールするだけで、マスタングRTRは非常に素直に横を向いてくれる。

もちろん、最初から完璧にできるわけではない。失敗するとすれば、それはクルマのセッティングではなく、ドライバーが操作に慣れていないことが原因だ。

ギッティン自身も、この仕様を「ドリフトに最適化したクルマであって、完全なドリフトカーではない」と説明している。

これは非常に重要なポイントだ。

本格的なドリフト専用車にしてしまえば、一般道を走るという本来の用途が大きく犠牲になる。しかしRTRは、普段は普通に乗れるマスタングでありながら、ドリフトを楽しみたいときには一気にその世界へ入っていける。

普段使いでも意外と快適

サーキットまでの一般道でも、マスタングRTRは楽しいクルマだった。

乗り心地はスポーティでありながら、必要以上に硬くない。MagneRideを選択すれば、さらにバランスの取れた走りが期待できる。

そして日常的な走行でも印象に残ったのが、アンチラグによるスロットルレスポンスの改善だ。

ドリフトだけでなく、普通に直線で加速するときや、コーナー出口でアクセルを踏み込むときにも、ターボラグの少なさが明確に感じられる。

さらに4つのモードを持つ可変バルブ式の4本出しエキゾーストも魅力だ。

低音の効いたサウンドに加え、アクセルオフ時には適度なバブル音やガルグル音も聞こえる。

4気筒ターボの音に物足りなさを感じていた人にとって、この排気系はエンジンのキャラクターをかなり楽しい方向へ変えている。

見た目もRTRらしく

外観は標準マスタングをベースとしているものの、Mustang GT用のフロントフェイシアと専用グリルを装着。

グリルにはRTRバッジが備わり、インレットもイルミネーション仕様となる。運転席側のインレットはエアボックスへ直接エアを導く構造だ。

ブレーキキャリパーはブラックが標準だが、RTRを象徴する「Hyper Lime」カラーも選択できる。

ホイール、ドアミラーカバー、バッジ、ボンネットやサイド、リアフェンダー周辺のグラフィックには「Tarnished Dark Anodized」カラーを採用。

ボディカラーは10色から選べる。

さらにHyper Limeは、シートベルトやステッチ、ドリフトブレーキレバーにも取り入れられる。

派手すぎると感じる人向けには、ブラック&グレーの組み合わせも用意される。

1,330ドルのRTR Appearance Packageを選択すれば、Hyper Limeのブレーキキャリパーと専用エクステリアグラフィックを追加できる。

イルミネーション付きのスカッフプレートは標準装備で、助手席側ダッシュボードにはシャシーナンバーを刻んだプレートも装着される。

4万ドル台で手に入る「ドリフト・マスタング」

結論から言えば、2026年型フォード・マスタングRTRは、MotorTrendがこれまで試乗したEcoBoostマスタングの中で最高の一台だった。

そして重要なのは、その性能が比較的手の届きやすい価格で提供されていることだ。

ベースRTRパッケージの価格は44,860ドル。

MagneRideサスペンションを追加すると1,750ドル上乗せされ、合計46,610ドルとなる。

さらに350hp/400lb-ft仕様のFord Performanceパワーマップをディーラーで施工すると、総額はおよそ47,410ドルが目安になる。

もちろん、ここからオプションを追加すれば価格はさらに上がる。

そして、このクルマを購入した人が避けられないのがタイヤ代だろう。

なにしろ、このマスタングRTRはタイヤを煙にすることこそが得意なのだから。

ただし、それも含めてRTRの魅力なのだ。

単なる見た目だけの特別仕様車ではない。

普段は快適に走ることができ、必要ならサーキットへ持ち込み、そして広い場所があればドリフトまで楽しめる。

2026年型マスタングRTRは、EcoBoostマスタングという存在を、これまで以上に「遊べるスポーツカー」へと変えた一台なのである。

2026年型フォード・マスタングRTR 主要スペック

項目 仕様
ベース価格 44,860ドル
レイアウト フロントエンジン・後輪駆動、4人乗り、2ドアクーペ
エンジン 2.3L 直列4気筒ターボ DOHC 16バルブ
最高出力 315~350hp
最大トルク 350~400lb-ft
トランスミッション 10速AT
車両重量 3,800lb(メーカー公表値)
ホイールベース 107.0インチ
全長×全幅×全高 189.4×76.1×55.0インチ
0-60mph 4.5秒(MotorTrend推定)
EPA燃費 21/30/25 mpg(市街地/高速/複合)
EPA航続距離 400マイル
販売状況 販売中

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