日産セントラは、決して速いクルマではない。むしろ2026年型の最上級グレード「SL」をテストすると、その動力性能には少し物足りなさを感じる。
しかし、それだけでこのクルマを評価してしまうのは早計だ。
セントラの本当の魅力は、手頃な価格、上質なインテリア、意外なほど優れたハンドリング、そして日常の足として必要なものをきちんと揃えていることにある。
今回テストした2026年型セントラSLの車両価格は29,235ドル。オプションなどを含めたテスト車でも30,990ドルに収まっていた。3万ドル前後のセダンとして考えれば、決して「安いから我慢して乗るクルマ」ではない。
パワー不足は明らかな弱点
2026年型セントラは、基本的に従来型と同じプラットフォームを使用している。そしてパワートレインも大きく変わっていない。
搭載されるのは2.0L自然吸気直列4気筒エンジンで、最高出力149hp、最大トルク146lb-ftを発生。トランスミッションはCVTで、駆動方式は前輪駆動だ。
現在のコンパクトカー市場を考えると、この数字はかなり控えめだ。
例えば今回テストしたセントラSLは0-60mph(約97km/h)加速に9.0秒を要した。同じく2026年型のKia K4は1.6Lターボで190hp、195lb-ftを発生し、0-60mphを7.0秒で駆け抜ける。
さらに、以前テストしたセントラSRは8.3秒だった。今回のSLはそれよりも遅い。
1/4マイルでも結果は16.9秒、終端速度83.8mph。セントラSRの16.5秒や、Kia K4の15.4秒と比べると、加速性能では明らかに不利だ。
そして、2026年型セントラにはハイブリッド仕様も用意されていない。電気モーターのアシストによって発進時の力強さを補うこともできない。
この点は、トヨタやホンダなどがハイブリッドを展開する現在のコンパクトセダン市場では、大きな弱点になっている。
ブレーキ性能にも課題
加速以上に気になったのがブレーキ性能だ。
60mphから完全停止するまでに必要だった距離は133フィート。これはかなり長い数字で、MotorTrendのテストでは明確な弱点となった。
一方、一般道でのブレーキフィールそのものは自然で、効き方に大きな問題があるわけではない。
興味深いのは、以前テストしたセントラSRが同じ60-0mphで119フィートだったことだ。こちらのほうが明らかに優秀な数値を記録している。
意外なほど楽しいハンドリング
では、セントラは走って楽しくないのか。
実際には、その逆だ。
高速走行用のオーバルコースで100mphまで加速すると、発進直後こそ力不足を感じるものの、速度が乗ってしまえばクルマは安定している。
もちろん、セントラを100mphで走らせるような状況は一般ユーザーにはほとんど必要ない。それでも、高速道路を通常の速度で走る限り、十分に落ち着いたクルマだ。
さらに評価したいのが、乗り心地とハンドリングである。
セントラはこの価格帯のコンパクトセダンとしては驚くほどよく曲がる。ハンドリングコースでは、コーナーでのロールが少なく、軽快かつ俊敏な動きを見せた。
エンジンとCVTは多少ブーンという音を発するものの、CVTが作り出す疑似的なシフトチェンジは滑らか。アクセルを踏んだときのフィーリングも比較的自然だ。
ステアリングは重めだが、反応は意外なほどダイレクト。
パワーこそ少ないものの、ドライバーがクルマを操作している感覚はしっかりと残されている。
ドライブモードの切り替えも簡単で、センターコンソールに設けられたボタンから操作できる。その周辺には深さのある収納スペースも用意されている。
価格以上に上質なインテリア
2026年型セントラの大きな魅力のひとつがインテリアだ。
セントラは「安いクルマだから内装も安っぽくて当然」という考え方をしていない。
もちろん、素材そのものは価格に合わせて選ばれている。しかし、色使いやディテールの処理が巧みで、ブラック一色の安価な内装という印象を与えない。
今回のテスト車は、ブルー、グレー、ベージュを組み合わせたインテリアに、白いキルティングシートを採用。さらに、左右非対称のステッチやウッド調のアクセントも加えられていた。
このクラスのセダンとしては、かなり魅力的なキャビンだ。
むしろセグメントの中でも最も美しいインテリアのひとつと言っていい。
後席とトランクも実用的
インテリアの質感は後席にも受け継がれている。
ただし、後席の装備はそれほど充実していない。USBポートは用意されているものの、後席用エアコン吹き出し口やシートバックポケットは装備されていない。
その一方で、トランクは非常に広い。
日常の買い物から旅行まで、かなりの荷物を積み込めるだけの容量があり、セダンとしての実用性は高い。
大型ディスプレイで使い勝手も向上
2026年型では、テクノロジー面も大きく進化した。
ドライバー用ディスプレイとセンターディスプレイは、まるで一枚の大型スクリーンのようにつながって見えるデザインになっている。
センターの12.3インチタッチスクリーンは従来型より4.3インチ大型化。ドライバー用ディスプレイも12.3インチとなり、こちらは5.3インチ拡大された。
グラフィックはシャープで見やすく、新しいインフォテインメントシステムも従来型から大きく改善されている。
ワイヤレス充電にも対応し、スマートフォンとのペアリングも簡単。オーディオの音質も、この価格帯としては十分に満足できるレベルだ。
さらに、センターコンソールには音量やチューニング用の物理ボタンが残されている。
タッチ操作だけに頼らない点も、日常的に使うクルマとしては好印象だ。
セントラにもProPILOT Assistを搭載
2026年型セントラでは、日産の先進運転支援システム「ProPILOT Assist」も選択できるようになった。
インテリジェントクルーズコントロールとステアリングアシストを組み合わせたシステムで、SLでは標準装備。SRではオプションとなる。
実際に試したところ、車線内を維持しながら設定速度を保つ動作はしっかりしていた。
ただし、テスト中には一度、実際には路面が滑っていないにもかかわらず「路面が滑りやすい」という警告を表示してシステムが解除された。
幸い、数分後には再び使用可能になり、その後は特に問題は起きなかった。
また、地図に登録されていない道路ではクルーズコントロールは利用できるものの、レーンキープアシストは作動しなかった。
それでも、このクラスのセダンでProPILOT Assistを利用できること自体は大きな魅力だ。
安価だからといって妥協する必要はない
2026年型日産セントラSLは、速いクルマではない。
0-60mph加速は9.0秒、1/4マイルは16.9秒。133フィートというブレーキ性能も、このクルマの明確な弱点だ。
しかし、セントラの価値はそこだけでは決まらない。
ハンドリングは価格以上に優秀で、コーナーでは軽快に動く。ステアリングもダイレクトで、運転する楽しさをしっかり残している。
さらに、インテリアはこの価格帯として驚くほど魅力的だ。大型ディスプレイやワイヤレス充電、ProPILOT Assistなど、装備面でも大きく進化している。
もちろん、ロードノイズや風切り音はそれなりに入ってくる。パワートレインも明らかに力不足だ。
それでも、3万ドル前後で購入できるセダンとして考えれば、セントラSLは非常にバランスの取れた一台だ。
セントラは、自分を必要以上に大きく見せようとはしない。
「安いクルマだから仕方ない」と言って装備や質感を諦めることもない。
購入者が支払った金額に対して、きちんと価値を返してくれる。
そして、走りとインテリアの完成度を見る限り、日産は少しずつ本来の魅力を取り戻しつつあるように感じられる。
あとは、このセントラにハイブリッドが加われば、さらに競争力の高いコンパクトセダンになるだろう。
2026年型日産セントラSL 主要スペック
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| 車両価格 | 29,235ドル |
| テスト車価格 | 30,990ドル |
| ボディ | 4ドア・5人乗りセダン |
| 駆動方式 | FF |
| エンジン | 2.0L 直噴DOHC 16バルブ直列4気筒 |
| 最高出力 | 149hp / 6,000rpm |
| 最大トルク | 146lb-ft / 4,000rpm |
| トランスミッション | CVT |
| 車両重量 | 3,135lb(約1,422kg) |
| 前後重量配分 | 62:38 |
| ホイールベース | 106.5インチ(約2,705mm) |
| 全長×全幅×全高 | 183.3×71.5×57.1インチ |
| タイヤ | Hankook Kinergy XP |
| タイヤサイズ | 215/50R17 91V |
| EPA燃費 | 29/36/32mpg(市街地/高速/総合) |
| EPA航続距離 | 397マイル |
| 0-60mph | 9.0秒 |
| 1/4マイル | 16.9秒 @ 83.8mph |
| 60-0mph制動距離 | 133フィート |
| 最大横G | 0.78G |
| 8の字コース | 27.7秒 @ 0.61G(平均) |